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2019年8月20日

【ブック&コラム】『連鎖退職』

退職者が続出する構造と予防策とは

c190827.jpg著者・山本 寛
日本経済新聞出版社、定価850円+税

 

 「あの人も辞めた」「先輩も同期もどんどん辞めている」という状況から“早く辞めたほうがよさそうだ”という空気が支配的となり次々と社員が退職していく「連鎖退職」を考察した1冊。当事者・人事担当者たちの肉声を拾い、リアリティあふれる資料から冷静に真相に迫る記述が興味深い。

 連鎖退職には、①ドミノ倒し型と②蟻の一穴型の2種類があると分析。前者は、1人欠けることで残ったメンバーに負荷がかかり、さらなる退職を誘発させるのに対し、後者は、1人の退職をきっかけに潜在化していた職場の不満が顕在化し、次々に退職者が出る状況を指摘している。さらに、連鎖退職が起きやすい環境、しやすい人の傾向を捉え直し、後半には予防策をまとめている。

 ポイントは“簡単に辞めないほうがトク”という環境作りであり、学習機会の提供や日頃からキャリアのすり合わせができる関係の構築等を挙げている。また、サクセッションプランがあればキーマンが辞めても連鎖は押さえ込めるとも述べ、総合的な取り組みの方向性を示唆している。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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