Q 不妊治療と仕事との両立支援が大きな課題になっていると聞きますが、どのような支援が行われているのでしょうか。
A 夫婦のうち、4.4組に1組が不妊治療の経験があり、不妊治療(生殖補助医療等)により誕生する子どもは10人に1人といわれています。厚生労働省が実施した調査では、不妊治療を経験した人のうち26.1%が不妊治療と仕事を両立できずに仕事や不妊治療を辞めたり、雇用形態を変えています。不妊治療には、通院回数の多さ、精神面での負担の大きさ、通院と仕事の日程調整の難しさがあるほか、治療を受けていることを職場に知られたくない人もいるなどの課題があります(令和5年度「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」)。
令和4年には不妊治療の保険適用がなされ助成等も拡充される中で、職場内において不妊治療についての認識があまり浸透していないなどの現状も踏まえ、企業における不妊治療と仕事との両立のための職場環境の整備が求められています。このため、不妊治療のための両立支援や休暇制度などについて理解促進を図るため、以下のような事業が実施されています。
(1)両立支援等助成金
不妊治療と仕事との両立、女性の健康課題における心身の不調への対応と仕事との両立に資する職場環境の整備に取り組み、不妊治療、女性の健康課題対応を図るために利用可能な休暇制度等(休暇制度・所定外労働制限制度・時差出勤制度・短時間勤務制度・フレックスタイム制・在宅勤務等)を導入し、労働者に制度を利用させた中小企業事業主に対する助成です。
一定の要件により、最初の対象労働者が生じた場合、30万円が支給される(中小企業の場合、1回限り)。過去に両立支援等助成金(不妊治療両立支援コース)を受給した事業主は受給できません。
(2)不妊治療に関する認定制度(プラス認定)
令和4年4月に次世代育成支援対策推進法(施行規則)が改正され、不妊治療と仕事との両立に取り組む企業を認定する「くるみんプラス」等制度を創設されました。「くるみん」等の認定を受けた企業が、不妊治療と仕事との両立に積極的に取り組み、一定の認定基準を満たした場合に、「プラス」認定が追加され、「くるみんプラス」「プラチナくるみんプラス」「トライくるみんプラス」が与えられます。具体的には、以下の認定基準を満たす必要があります(概略)。
1.次の(1)及び(2)の制度を設けていること
(1)不妊治療のための休暇制度(年次有給休暇を除く)
(2)不妊治療のために利用することができる制度(半日・時間単位の年次有給休暇、所定外労働の制限、時差出勤制度、フレックスタイム制、短時間勤務制度、テレワーク)
2.不妊治療と仕事との両立の推進に関する方針を示し、労働者に周知
3.不妊治療と仕事との両立に関する研修などの取組を実施
4.両立支援担当者)を選任し、労働者に周知

(3)不妊治療と仕事との両立支援担当者等向け研修会
厚労省において、人事労務担当者、産業医、産婦人科医、産業保健スタッフ等を対象として、不妊治療の実態、両立支援制度の導入・運用のためのノウハウなどを内容とする研修会が実施され(令和5年度「不妊治療と仕事との両立支援担当者等向け研修会」)、以下に動画が配信されています。企業が両立支援に取り組む際のポイントについては、行政、産婦人科医、社会保険労務士から、具体的な取り組み事例等は、産業医、経験者・コンサルタントから詳しく説明されていますので、ぜひ参考にしたいものです。
5.子どもを望み不妊治療に取り組む人をみんなで応援していける組織へ
少子高齢化に拍車がかかり、人手不足が経営を直撃する時代、企業の人事戦略としても、女性活躍推進、障害者雇用、多様性の尊重などの施策とともに、優秀な人材の採用と定着、キャリアアップを促進する観点からも、がんなどの病気療養と仕事、不妊治療と仕事などの「両立支援」にも、積極的に取り組んでいきたいものです。
(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)






















