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2019年9月26日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」39・上限設定ありの通勤手当

Q 労使協定方式の通勤手当を実費支給とする予定ですが、通勤手当額に一定の上限を設けることは可能でしょうか。

 上限付き実費支給とすることは可能ですが、上限は、所定労働時間×72円以上であることが求められます。1日の所定労働時間が8時間であれば、1日の上限は576円以上であることが求められます。

 例:1日の通勤手当支給上限576円とする場合
   実費400円の者に支給する通勤手当 400円
   実費600円の者に支給する通勤手当 576円

nakamiya03.png 通勤手当は月額で支給することが多いため、上限を月額で設定することも差し支えありません。例えば月平均所定労働時間170時間であれば、170時間×72円=12,240円以上の上限を設けることが考えられます。通勤手当の支給方法を検討した結果、1カ月の上限を所定労働時間に関わらず1万5000円と定める派遣元もあります。

 なお、有期雇用派遣社員、パートタイム派遣社員の場合、派遣法だけではなくパート有期法の適用も同時に受けることになります。1日の通勤手当上限を576円と定めることは派遣法上問題ありませんが、派遣元の通常の労働者(営業職などいわゆる社員)に対して通勤交通費の上限を設けず実費全額を支給している場合、パート有期法の検討が必要となります。

 有期雇用派遣社員と派遣元の社員の通勤手当の支給条件が異なる場合、その差異が不合理ではないことが求められます。ハマキョウレックス事件では、契約社員と正社員の通勤手当の上限額に差があることは不合理と判断されていることから、各社それぞれ事情があるとはいえ不合理ではないとする理由はないかもしれません。

 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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