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2020年9月24日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」39・コロナ禍に対応するための派遣契約の見直し

Q 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による派遣就業への影響が深刻化しつつあります。派遣労働者の休業などに備えて派遣元、派遣先が派遣契約の見直しを検討する上でのポイントを教えてください。

koiwa.png 新型コロナウイルス感染症の雇用への影響は派遣労働者についても例外ではなく、秋冬にかけて派遣契約や労働契約の更新時期に契約解除が発生することが懸念されており、コロナ禍による景況の悪化を理由とする派遣労働者の休業についても大きな課題となると考えられています。

 この点について新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)では、派遣労働者の休業(派遣契約の一時停止)にあたっては、派遣料金などの取扱いは「民事上の契約関係の話ですので、労働者派遣契約上の規定に基づき、派遣元と派遣先でよく話し合い、対応してください」とされています。

 休業の場合の派遣料金の取扱いは派遣契約の内容によるため、状況によっては
今後の休業などを見越して契約内容の変更や修正などを行うことが必要でしょう。派遣契約の変更・修正の論点としてはいくつかの方向性が考えられますが、一例としては以下のような内容が考えられると思います。

・コロナ禍のような不可抗力の休業における派遣料金などの取扱い
(法令に基づく休業要請等が実施されている場合の取扱い、派遣元が休業手当相当額について助成金等を受ける場合の取扱い)
・派遣先と派遣元における相談や協議の手続きについて
・派遣先の事情による休業の際の手続きについて
・派遣労働者をテレワークに従事させる場合の取扱い
・派遣労働者の事情による休業の際の取扱い

 派遣契約は派遣先と派遣元との間の取引契約ですから、あまり頻繁に内容を変更することは想定されていない場合が多いですし、一方当事者から内容の変更を申し出るのが難しいケースもあります。しかし、今回のようなコロナ禍の状況は関係者が協力して乗り切っていかなければならない事態です。円満な相談や協議を通じて連携と信頼関係を高めておくことが、派遣労働者の雇用を守ることに資するといえるでしょう。ぜひ関係者が納得し合える形で前向きな見直しを進めたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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