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2020年10月13日

【ブック&コラム】気になる「第九」の"運命"

 今年はベートーベンの生誕250年にあたり、年初からFMラジオやテレビなどで盛んに演奏されている。今はオペラにのめり込み、長いことベートーベンから遠ざかっていた私にとっては、久しぶりに作品の数々と「再会」した気分だった。

c201013.jpg 最近はただ演奏を流すだけでなく、さまざまな新しい試みも登場。ラジオでは交響曲第5番(運命)の聴き比べをたっぷり1時間やっていた。もっとも、出だしの「ダダダダーン」を何人もの歴代指揮者ごとに聞かされると、あの激しさに嫌でも耳が疲れてくる。また、有名な「不滅の恋人」探しの最新情報を関連楽曲とともに伝える番組もあり、それなりに面白かった。

 今年は年初から、新型コロナウイルスのお陰で外出がままならなかったので、ベートーベンの聴き直しはとても楽しい時間になった。しかし、コロナ禍は音楽業界をも襲い、多くのオーケストラや歌手がコンサートを開けず、窮地に立たされているという。ソーシャル・ディスタンスを取っての演奏会も開かれるようになったが、私は年末が気になっている。

 例年なら、あと1カ月余もすれば日本は「第九」の大合唱に包まれる。12月だけで150回もの演奏会が開かれるという調査もあるが、第九のようなオーケストラ、合唱団、観客が密集するイベントは、従来のやり方では不可能だろう。全体の人数を"間引く"か、オンラインで流すか、寒くても屋外でやるか......。生演奏の迫力と熱気は、実際に聴いた者にしかわからない。こんな年だからこそ、第九を聴いてコロナに立ち向かう英気を養いたいと思うが。(本)

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