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2020年12月17日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」51・令和3年度の一般賃金⑥

Q 労使協定方式に関するQ&A第3集では、職種・地域ごとの一般賃金の取扱いについて述べられていますが、具体的にはどのように対応すべきでしょうか。

 10月21日に公表された労使協定方式に関するQ&A第3集では、労使協定や例外的取扱いについての論点に触れられています。職種・地域ごとの取扱いについては、問1-2で以下のように書かれています。

問1-2 職種・地域ごとに令和3年度通達の第1の5に定める「一般賃金の額(令和2年度)」(例外的取扱い)を適用することは可能か。

答 令和3年度通達の第1の5に定める「一般賃金の額(令和2年度)」(以下本Q&Aにおいて「例外的取扱い」という。)については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による経済・雇用への影響等により、労働者派遣契約数が減少傾向にある職種や地域などにおいて使用されることを想定しているものである。

koiwa1.png これを読んだ知人が先日、「問いと答えが合っていないようで、理解するのが難しい」と漏らしていました。そのようにいわれる気持ちは分からなくありませんが、このQ&Aはやや迂遠的な表現をしていますが、決して矛盾しているわけではありません。結論は、「労働者派遣契約数が減少傾向にある職種や地域などにおいて使用されることを想定している」です。したがって、そのような前提を欠いて「職種・地域ごと」に例外的取扱いを適用することはできません。

 コロナウイルスの感染拡大を受けた例外的取扱いは、そもそも派遣労働者の雇用維持・確保を目的とするものであり、特定の職種・地域において適用することを前提としています。それは「特定の職種・地域におけるこれまでの事業活動を示す指標の動向」が労使の議論や労使協定への記載項目の一つとして想定されており、通達の「留意点」に「職種や地域ごとに事業活動を示す指標を確認することが基本となること」とあることからみても明らかだといえるでしょう。

 通達やQ&Aの内容は派遣法の特殊性や一般賃金の仕組みの複雑さも相まって理解しづらい部分もありますが、コロナによる経済・雇用への影響が派遣業界を直撃している中で、行政や業界の関係者の方々が信頼関係を前提として現実的な方策に向けた努力を重ねている点を理解しつつ、真摯な対応を心がけていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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