今の時代の「人材派遣」をわかりやすく解説
著者・小岩 広宣、山野 陽子
日本法令、定価2530円(税込)
「多様な働き方」が広がり始めて久しい。実際に周りを見渡すと、いわゆる正社員以外の働き方をしている人は多いし、とりわけコロナ禍以降は雇用や勤務形態に対して寛容かつ柔軟になっているように感じる。それに比べて「人材派遣」における「多様な働き方」は、パートタイマーや契約社員よりも難しく感じてしまい、具体的なイメージがつかめていない人も少なくない。
本書は、そうした人たちに向けた実務書だ。「はしがき」にもあるように、法改正や規制強化によって複雑かつ難解になっている派遣制度について、端的に全体像が理解できるように書かれている。イラストや図解入りでQ&Aとダイアローグが中心に構成されているため、知識ゼロからでもあまり抵抗感なく読み進めることができる。
「行政調査への対応」に力点を置いているのが、本書の特徴のひとつだ。国から許可を受けた事業者のみに許された人材派遣は、適法・適正な運営をめぐって国からさまざまな定期・臨時のチェックを受けるが、それは派遣元事業者のみならず、派遣を受け入れている企業にも及ぶ。派遣労働者から行政への相談や申告も含めて、行政との関係や調査への対応は、派遣に関わるすべてのステークホルダーに必要な視点だ。
最近は、いわゆる「スポットワーク」で働く人やフリーランスの形態で仕事をする人も増えている。人材派遣には関係ないと考えている人でも、これらの働き方と派遣との違いや共通項をしっかり確認し、「多様な働き方」と向き合う基礎を培うことが重要視されている。本書は、その観点からも「今の時代の人材派遣」がわかりやすく解説された良書といえる。(俊)