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2021年2月18日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」59・派遣法省令・指針の改正③

Q 令和3年の派遣法指針改正では、派遣先の労働関係法令上の義務に関する苦情について誠実かつ主体的に対応するという点が盛り込まれたと聞きます。具体的には、どのような内容ですか。

koiwa1.png 派遣法には、「労働基準法等の適用に関する特例等」という規定が置かれています。派遣元責任者講習などでも時間を割いて触れられる重要なテーマですが、一番最後の方に出てくる項目なので、なかなか関心を持ってもらいにくい印象を筆者が講師のときにも持ったことがあります。

 労働法関係の規定は、当然のことながら原則として雇用主である派遣元に適用されますが、就業場所における労働時間管理や安全管理、作業管理などは現実的に派遣元の事業主に責任を問うことの困難であるため、派遣労働者の保護をはかる観点から、派遣先を事業主と「みなす」ことになっています。これが「労働基準法等の適用に関する特例等」です。

 「労働基準法等の~」とありますが、労基法だけでなく、労働安全衛生法、男女雇用機会均等法、育児介護休業法などのみなし規定が置かれています。1月の派遣先指針の改正では、これらの点について「労働者派遣の役務の提供を受ける者を派遣労働者を雇用する事業主とみなして労働関係法令を適用する事項に関する苦情については、誠実かつ具体的に対応しなければならないこととする」という文言が追加されました。

 派遣法では派遣先は原則として労働組合法上の使用者ではないと解釈されていますが、裁判例などでは、派遣先が雇用主と同視できる程度に現実的・具体的な支配力を有し、近い将来、労働者と雇用契約が成立する現実的・具体的可能性がある場合などは、労働組合法上の使用者に該当しうるとされます。

 裁判例などの考え方では、①派遣契約上の就業条件に反する場合、②派遣法に規定する労基法などのみなし規定について派遣先に法違反があった場合、③偽装請負の場合には、派遣先に団交義務が生じるとされます。②は、派遣先にも周知徹底する必要が高いことから、派遣先指針に盛り込まれました。派遣先の労基法などの違反についての苦情や団交申入れについては誠実かつ主体的に対応することが求められますので、派遣先のコンプライアンスについては万全の意識と対応をもっていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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