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2021年3月 9日

【ブック&コラム】『サラリーマン生態100年史』

ばからしくも懐かしい昭和の職場

c2102_2.jpg著者・パオロ・マッツァリーノ
KADOKAWA、定価900円+税


 日本文化史研究家を自認する著者(日本人ペンネーム説が濃厚)は、明治以降の新聞・雑誌・映画・ドラマを調べ、社長・社員・職場の「おもしろすぎる生態」を本書に整理している。資料調査自体は真面目で地道な作業だったと思われるが、文体はユーモラスで、ぶっちゃけた記述が楽しい。

 昭和の社長・秘書・マイホーム・新入社員・痛勤地獄・宴会・出張・こころの病・ビジネスマナー・産業スパイ......と章タイトルを並べるだけでも懐かしさと奥深さが想像でき、実際、内容も期待をほぼ裏切らない。満員電車の課題は大正時代からあり、時差通勤の提案もその頃からあったと読者は博識になれる。勤労者のメンタル不調では、夏目漱石の神経衰弱に始まり、1970年前後のモーレツブームとノイローゼ、1980年代以降の過労死までの変遷が理解できる。

 サラリーマン・OLの宴会芸に至っては、ばかばかしい歴史を愚直に追い、100年の間、日本の会社員はズッコケ人材が多数派であり「昔の人は立派だった」わけでは決してないと、結論めいたまとめを導き出している。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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