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2021年4月 8日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」66・派遣労働者の待遇改善に向けた対応マニュアル②

Q 労使協定方式で「立候補者が現れず代表者を選出できない」「代表者を決めるための投票が過半数集まらない」という場合の対応方法は?

koiwa1.png 「派遣労働者の待遇改善に向けた対応マニュアル」の第2章「待遇決定における困りごとへの対応策」では、典型的な「困りごと」の例として、「立候補者が現れず代表者を選出できない」「代表者を決めるための投票が過半数集まらない」が取り上げられています。過半数代表者の立候補者が現れない背景として、①馴染みのない方法で立候補者の募集が周知されているため労働者が気付かない、②過半数代表者の選出の必要性を理解していない、③自らが過半数代表者として立候補することに抵抗を感じる、の3点が紹介されていますが、筆者の肌感覚では③の問題も小さくないと感じます。

 「立候補者が現れず代表者を選出できない」ことへの対応策としては、代表者選出の方法について労働者の状況に応じた説明、立候補者が出ない場合の立候補期間の延長や推薦者の募集などが挙げられ、「代表者を決めるための投票が過半数集まらない」ことへの対応策としては、給与明細への同封やネットやスマホなどでの投票、営業担当者の派遣先訪問時の派遣労働者に対する投票のよびかけなどが挙げられています。

 過半数代表者の選出手続き自体は、ネット上などで投票しやすい環境を整えたり、投票方法を複数用意したり、複数回に渡って投票を促すなど、派遣元が努力することによって過半数代表者の選出を後押しすることができますが、そもそも過半数代表者は「派遣元事業主の意向に基づき選出されたものでないこと」(施行規則25条の6)が求められるため、立候補者が出ない場合に派遣元ができうることは限られます。

 マニュアルでは「想定される工夫」として、「朝会などの労働者が定期的に集まる機会や個別面談において、口頭でコミュニケーションをとることが望ましい」という例が挙げられていますが、このあたりが現実的なアプローチの方法かもしれません。派遣元としては、派遣労働者が過半数代表者を目指して自らの待遇を決定するプロセスに参画することの意義を効果的に伝えていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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