コラム記事一覧へ

2021年7月 6日

【ブック&コラム】『仕事と人生』

キャリアの軌跡で読み解く人材論

c210400.jpg著者・西川 善文
講談社、定価990円(税込)


 三井住友銀行元頭取"ラストバンカー"と称された著者による、6章(評価される人・成長する人・部下がついてくる人・仕事ができる人・成果を出す人・危機に強い人)に区分けされた人材論。いずれの記述もご自身の職業体験がベースで、ほぼ自伝といえる内容だ。

 古くは、住友銀行入行の顛末(1961)、最初の配属先(大阪市大正区)での奮闘にさかのぼる。その後、調査部・審査部では「粉飾決算の見抜き方」を得意とし、上司にも恵まれ、安宅産業の破綻処理担当というターニングポイントを迎える(1975)。そこでの経験が、バブル崩壊に伴う金融危機での不良債権処理(1997)の英断に活きたと述懐している。「バンカー人生に平時はなかった」と振り返る通り、銀行在籍の40年間は動乱期に相違なく、とりわけ全部長をとりまとめ「磯田会長辞任」を要求したクーデター(1990年)の真相は読みどころの1つだ。

 部下の叱り方・褒め方、率先垂範のバランス、責任を取る覚悟等のリーダー論もさることながら、キャリアの軌跡そのものがドラマチックで興味深い。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

PAGETOP