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2022年4月14日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」118・派遣先責任者の選任要件

Q 派遣先責任者の選任について、派遣先の事業所が小規模で適任者がいない場合は、どのように選任したらよいのでしょうか。

koiwa1.png 派遣先は、派遣就業の関係者に対する派遣法や派遣契約などの周知、派遣先管理台帳の作成、派遣可能期間の派遣労働者からの苦情処理、派遣労働者の安全衛生などにあたるため、派遣先責任者を選任しなければなりません(派遣法41条)。派遣先責任者は「事業所等ごとに当該事業所等に専属の派遣先責任者として自己の雇用する労働者の中から選任すること」(省令34条)とされ、派遣労働者1人以上100人以下を1単位とし、1単位につき1人以上ずつ選任しなければならず、派遣労働者と派遣先が雇用する労働者の合計が5人以下の場合は選任しなくても構いません。

 業務取扱要領では「事業所その他派遣就業の場所ごとに専属の派遣先責任者」を選任しなければならないとありますが、「事業所その他派遣就業の場所」については次のように記載されています。

 「事業所等」については、工場、事務所、店舗等、場所的に他の事業所その他の場所から独立していること、経営の単位として人事、経理、指導監督、労働の態様等においてある程度の独立性を有すること、一定期間継続し、施設としての持続性を有すること等の観点から実態に即して判断する。
 事業所とは、雇用保険法等雇用関係法令における概念と同様のものであり、出張所、支所等で、規模が小さく、その上部機関等との組織的関連ないし事務能力からみて一の事業所という程度の独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱う。(令和4年4月版、282ページ)


 したがって、派遣労働者が就業する派遣先事業所が出張所のような規模や実態にあり、組織的にみても独立性がないことによって雇用保険の適用関係も直近上位の組織に包括されているような場合は、派遣先責任者の選任についても全体としての事業所の中から行うことになります。筆者も先日ある講座に登壇した際に受講者から質問を受けましたが、実際に派遣労働者が就業する現場からは相当程度に離れた事業所に常駐する派遣先の担当者が派遣先責任者に選任されるようなケースもあり得ますので、この点は例外的な考え方として押さえておきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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