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2022年5月10日

【ブック&コラム】 "マッチング社会"の気味悪さ

c220510.jpg 大学生の就職活動が本格化している中で、就活生が「会社選びから対策までエージェントにお任せ」という新聞記事を読み、どこか引っ掛かるものがあった。求人企業と就活生を結ぶ支援企業の存在は社会に定着しており、多くの学生が抱く漠然とした将来像を明確にするきっかけを作るという意味でも重要だ。それはわかる。

 だが、子供のころは学習塾によって進学先がほぼ決められ、首尾よく大学に入れたらエージェントに家庭教師先や就職先を勧められ、社会人になったら結婚相手もエージェントを通じて選べる。人生の節目節目にエージェントが介在して、「これでいかがですか」と勧めてくるわけだ。

 その方が効率的で、あれこれ悩まずに済むことは確かだが、それで本当に自分自身で「決める」ことになるのだろうか。そんな"マッチング社会"とは一切無縁だった時代を振り返り、自分は社会に出て何をしたいのか、情報不足で悶々としていたころを思い出す。試行錯誤のムダも多く、決めるのに時間がかかったが、それはそれで知人も増えるという収穫も多かった。

 就職エージェントの場合、「お勧めの学生」がめでたく入社したら、その企業からエージェントに紹介手数料が入るとか。転職市場の仕組みとなんら変わりない。自分を取り巻く企業の間で、自分のあずかり知らぬ金が動く。現代の学生は、それを気味悪く思わないのかな。(本)

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