コラム記事一覧へ

2022年6月30日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」129・社会保険の勤務期間要件の変更

Q 10月から社会保険の被保険者資格の要件が一部変更されると聞きましたが、具体的にはどのような改正なのでしょうか?

koiwa1.png 厚生年金保険、健康保険の被保険者資格の要件については、週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同じ業務を行っている正社員など一般社員の4分の3以上とされており、常時501人以上の企業の場合はいわゆる「短時間労働者」(週の所定労働時間が20時間以上、勤務期間1年以上見込み、月額賃金が8.8万円以上、学生以外)も該当することになります(令和4年10月から常時101人以上に適用拡大)。このうち勤務期間の要件については、令和4年10月から以下のように改正されます。

(1)雇用期間が2か月以内の場合の取り扱いの変更

 現在は2か月以内の期間を定めて雇用される労働者は適用除外とされていますが、10月以降は、当初の雇用期間が2か月以内であっても、次の①②に該当する場合は雇用期間の当初から社会保険に加入することになります。

① 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」、または「更新される場合がある旨」が明示されている場合
② 同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合

c220630.png

 従来は2か月契約の契約社員や期間工などは社会保険の適用がないと理解されていますが、改正後は契約期間ではなく実態で判断されることになるため、契約期間が2か月であっても契約更新が予定されていたり、そうでなくても同じ2か月契約の労働者が契約更新された実績などがある場合には、入社時から社会保険に加入しなければなりません。この点は裁判例などの流れに基づいた合理的な改正だと思いますが、あくまでも雇用契約書の文言にとらわれると運用を誤るケースが出てくる可能性もあるため、十分に注意していきたいものです。

(2)短時間労働者の勤務期間要件の変更

 10月から短時間労働者の「勤務期間1年以上」の要件が撤廃され、これにより短時間労働者の勤務期間要件は一般の被保険者と同様になることで、(1)と同様に雇用期間の見込みが2か月超の場合などは社会保険に加入することになります。

 従来、短時間労働者には、①週所定労働時間20時間以上、②月額賃金8.8万円以上、③勤務期間1年以上見込み、④学生は適用除外の4つの適用要件がありましたが、このうち③勤務期間1年以上見込みが撤廃され、3要件となります。短時間労働者も一般の被保険者と同じ要件になることでとても分かりやすくなりますが、(1)で触れた2か月以内の場合の契約更新見込みや更新などの実績がある場合の取り扱いも同様である点は注意したいものです。

 10月からは短時間労働者への適用が101人以上の事業へと拡大される改正点が注目されますが、上記の(1)(2)は事業所の規模にかかわらずに実施される改正点であり、業種業態を問わず現場で直面するケースが非常に多い点でもありますので、余裕を持った確実な実務対応に心がけていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP