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2022年10月20日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」145・副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説②

Q 労働者が副業・兼業を行う場合の所定労働時間の通算について教えてください。

koiwa1.png 副業・兼業の場合の所定労働時間の通算については、「原則的な労働時間管理の方法」と「簡便な労働時間管理の方法」の2つがあります。ここでは基本である前者について考えることにします。副業・兼業によって複数の事業所で就業する労働者は、当然のことながら週40時間、1日8時間などの労働基準法の労働時間の規制を受けます。

 2つ以上の事業所で就業する場合、それぞれの事業所で所定労働時間があり、所定外労働が発生することになるため、通算のルールが明確でないと円滑に法定時間外労働を計算して、割増賃金を支払うことができなくなります。

 原則的な労働時間管理の方法では、複数の事業所で就業する労働者について、労働契約の締結の順序(先後)にしたがって所定労働時間を通算し、所定外労働時間を通算することになります。(例1)では、企業Aが先に労働契約を締結しているため、A社の所定内3時間+B社の所定内3時間+A社の所定外2時間+B社の所定外1時間の順で通算することになり、B社の所定外1時間が法定時間外労働として割増賃金の対象となります。

 (例2)は、同じく企業Aが先に労働契約を締結しているため、時間的には後から勤務が発生しているA社の所定内から通算することになり、A社の所定内3時間+B社の所定内3時間+B社の所定外1時間+A社の所定外2時間の順で通算するため、結果としてA社の所定外2時間のうち、1日8時間労働の枠を超える1時間分が法定時間外労働として割増賃金の対象となります。

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 副業・兼業が増加する時流の中で、労働時間の通算を行うことが求められる場面も増えつつあり、実務的に正しく処理しないと正確な給与計算などの対応ができないケースもありますが、やや複雑なルールであるため最初は理解しづらいと思われるため、上記の図などを参照にして、まずは原則的な労働時間管理の方法に慣れていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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