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2022年11月10日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」148・労使協定方式に関するQ&A第6集①

Q 労使協定方式に関するQ&A第6集が公開されましたが、ポイントを教えてください。

koiwa1.png 厚生労働省から8月26日に労使協定方式に関するQ&A第6集が公開されました(10月21日に更新)。労使協定の締結、基本給・賞与・手当等、退職金、賃金の改善について実務上の留意点に触れられていますが、基本的な事項として最も影響が大きいのは以下の問1―1だと思います。

問1-1 協定対象派遣労働者の範囲を定めるにあたり、「職種」や「労働契約期間」といった客観的な基準によらなければならないこととされているが、この基準として、例えば「派遣される事業所所在地の地域」や「派遣先均等・均衡方式を適用しない派遣労働者」、「雇用する全ての派遣労働者」等を定めることに問題はないか。

 労使協定方式は、派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理を行うことができるようにすることを目的としたものである。したがって、「派遣先の事業所その他派遣就業の場所」のみを理由として、「派遣される事業所所在地の地域」を協定対象派遣労働者の範囲として定めることは、派遣労働者の長期的なキャリア形成に配慮した雇用管理の対象とするかの判断に、就業場所は直接関係ないと考えられることから、その趣旨に反するおそれがあり適当ではない。

 また、協定対象派遣労働者の範囲を定めるにあたっては、客観的な基準によることとしているため、例えば「派遣先均等・均衡方式を適用しない派遣労働者」と定めることは、その範囲が客観的に特定されないため、認められないものである。一方、「雇用する全ての派遣労働者」と定めることは協定対象派遣労働者の範囲が客観的に明らかとなることから、これが直ちに問題となるものではない。

 なお、協定対象派遣労働者の範囲を定めるにあたっては、以下の点にも留意が必要である。
・賃金水準を引き下げることを目的に待遇決定方式を変えることは、労働者派遣法(以下「法」という。)の趣旨に反するものである。
・性別、国籍等、他の法令に照らして不適切な基準による場合や、労使協定方式の趣旨に反する場合は認められない。


 協定対象派遣労働者の範囲について、業務取扱要領では、「労使協定の対象となる派遣労働者の範囲を定めるに当たっては、職種(一般事務、エンジニア等)や労働契約期間(有期、無期)などといった客観的な基準によらなければならない」とされていますが、問1-1では「職種」や「労働契約期間」以外の例についての見解が確認されています。「就業場所」や「派遣先均等・均衡方式を適用しない派遣労働者」と定めることは認められないとしていますが、とりわけ派遣労働者のキャリア形成に就業場所は直接関係ないとの見解が示されている点は重要だと思われます。

 なお、令和5年度通達では、「第1 基本的な考え方」の中に「1労使協定方式の趣旨・目的等」が追加されています。内容としては従来からの解釈の確認ですが、一般賃金の額が下がった場合であっても、待遇が引き下がる場合は労働条件の不利益変更にあたり、原則として労使双方の合意が必要だという点が明文化されています。協定対象派遣労働者の待遇決定の理念が再確認されている点には、十分に留意する必要があるでしょう。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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