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2023年3月 2日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」164・派遣事業の自主点検表について

Q 「派遣労働者の待遇改善に係る自主点検表」について、具体的にはどのように対応したらよいでしょうか。

koiwa1.png 「派遣労働者の待遇改善に係る自主点検表」は、派遣労働者の同一労働同一賃金について、派遣元事業主及び派遣先が自主的に点検できるように厚生労働省によって作成されており、今までに内容が数度更新されています。自主点検表は行政から回収を求められているものではありませんが、派遣元、派遣先の事業所としてのコンプライアンスチェックのために、さまざまな場面で有効活用されています。現在の最新版は令和4年10月6日に更新されたものとなりますが、あらためてポイントを以下にご紹介します。

《労使協定の締結単位》
2 労使協定の締結単位は、適切ですか?
「恣意的に締結単位を分けることにより待遇を引き下げることは、労働者派遣法の趣旨に反するものであり認められません」


 従来は「待遇を引き下げることを目的として、恣意的に締結単位を分けることは、労使協定方式の趣旨に反するものであり、適当ではありません」とされていました。「目的として」という文言が使われなくなり、仮に「目的」としていなかったとしても、恣意的に組織単位を分けることにより、結果的に待遇を引き下げることは認められなという趣旨に理解できます。

 《同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の確認》
5 派遣労働者の賃金の決定方法を労使協定に定めるにあたり、同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金(一般賃金)の額と同等以上となるよう労使協定に記載していますか?
「現在、協定対象派遣労働者の賃金の額が一般賃金の額を上回るものとなっている場合に、一般賃金の額の水準に引き下げるなどにより賃金を引き下げることは、労働者派遣法の趣旨に反するものであり、認められません」


 従来は「現在、協定対象派遣労働者の賃金の額が一般賃金の額を上回るものとなっている場合に、一般賃金の額の水準に引き下げるなどにより賃金を引き下げることは、労働者派遣法の目的に照らして問題があります」とされていましたが、「問題があります」から、法に反し「認められません」とより明快な表現にされたことで、一般賃金の取扱いの趣旨が明確にされたと考えられます。

《関係者への待遇決定方式の情報提供》
11 労使協定を締結しているか否かについて、関係者(派遣労働者、派遣先等)への情報提供を行っていますか?
「情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することが原則です(厚生労働省の「人材サービス総合サイト」への掲載をお願いします)」


 従来は「情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することが原則です(厚生労働省の「人材サービス総合サイト」に掲載することも可能とする予定です)」とされていましたが、人材サービスサイトへの掲載申し込みがサイト上から可能となったことで記載変更がされました。自社サイトを持っていない場合や長期のメンテナンスなどでサイトが表示されない場合などは積極的に活用することが求められるため、十分に留意していきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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