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2023年3月16日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」166・国際女性デーと男性育休

Q 先日、国際女性デーのトピックを聞いていて、女性を取り巻くテーマと男性の育児休業との関係が話題になっていましたが、実態はどうなのでしょうか。

koiwa1.png 3月8日は「国際女性デー」でした。国際女性デーは、ニューヨークで婦人参政権を求めたデモを契機として、1920年にデンマークのコペンハーゲンで行なわれた国際会議で「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」記念の日とするよう提唱されことが起源であり、国連は1975年以来この日を「国際婦人デー」と定めて、加盟国に対して女性の社会参加の整備などを呼び掛けており、今日では世界各地で国際女性デーを祝うイベントが多数開催されています。

 今年も国際女性デーの前後にさまざまなイベントがありましたが、ようやくコロナ禍の猛威が落ち着いてリアル開催も再開される中で、昨今の傾向としては女性を取り巻くテーマに照準を絞ったものばかりではなく、男性の視点から仕事と育児との両立やワークライフバランスについて考えるテーマ、男性の特有の仕事上の問題や家庭生活などの問題を通して、それらと対峙し解決の糸口と向き合うことで、女性の社会参加や地位の向上を目指す切り口などもみられました。

 筆者も育休を取得した男性社員への調査を通じて、男女間のジェンダーギャップを解消するために必要な男性の働き方や価値観の変化について意識や実態を把握し、ディスカッションを行うイベントに参加しました。男性育休やダイバシティ推進のコンサルティングを行う専門家や企業経営者、人事部の責任者などが参加した会では、最新の統計調査に対して意見交換が行われたほか、経営や実務の現場目線からのリアルな問題提起や事例紹介などがありました。

 調査では、育休復帰後に短時間勤務や子の介護休暇など働きやすくするような制度への期待が男女ともに高かったほか、社員のネットワークや情報交換などのコミュニケーションを求める声は男性にも強い傾向がみられ、残業の抑制や短時間勤務などを望む傾向は女性に強くみられました。また、世代別にみると、Z世代(おおむね1996~2012年生まれ)やミレニアム世代(おおむね1981年~1996年に生まれ)ではコミュニケーションを求める人が多いのに対して、X世代(おおむね1965年~1980年代前半生まれ)では制度を希望する声が多いという興味深い結果もありました。

 Z世代やミレニアム世代は出産育児の適齢期の人も多いことから現実的な職場でのコミュニケーションを求める人が多いのに対して、Z世代は子育てを終えた人が多いことから過去を振り返って「こんな制度があったらよかった」と感じる人が多いのかもしれません。スキルアップやキャリアへの意識が高い人ほど制度、コミュニケーションの両方への期待度が高く、とりわけ職場でのコミュニケーションを強く望んでいる傾向がみられることは、企業が子育て世代の従業員と向き合う上でのひとつのヒントになるかもしれません。

 法改正への対応という面にとどまらず、これからの働き方と人材活用のモデルを考える上で、女性活躍推進や待遇などをめぐる差別解消、男性のケア労働への参加を見据えたキャリア設計は、まさに人材管理の現場においても重要なテーマだといえます。ぜひ国際女性デーを契機とするさまざまな統計や議論に触れながら、それぞれの立場や役割から、今後の現場対応に活かしていきたいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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