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2023年4月 6日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」169・令和5年4月からの法改正について

Q 今年4月からの法改正の全体像と留意点について教えてください。

 令和5年もいよいよ新年度となりますが、4月からも労働法や社会保険関係のさまざまな法改正があります。主な改正点をまとめると以下のとおりです。

出産育児一時金の支給額の引き上げ 42万円から50万円に引き上げ
オンライン資格確認の原則義務化 保険医療機関・薬局にオンライン資格確認の導入が原則義務化
月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ(中小企業) 中小企業の月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率を25%から50%に引き上げ
賃金のデジタル払い制度の開始 厚生労働大臣が指定する資金移動業者の口座への賃金支払いを認める
男性労働者の育児休業取得状況の公表の義務化 従業員1000人超の事業主に男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表義務化
雇用保険料率の変更 失業等給付に係る雇用保険料率を8/1000とする
労災保険の介護(補償)等給付額の改定 介護(補償)等給付の額について、介護を要する程度の区分に応じて改定
国民年金保険料の改定 令和5年度の保険料額は1万6520円
年金額の改定 67歳以下(新規裁定者)は令和4年度から2.2%の引上げ、68歳以上(既裁定者)1.9%の引上げ

koiwa1.png 今年も新年度から多くの改正がありますが、特に実務への影響が大きいのは、60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ(中小企業)、男性労働者の育児休業取得状況の公表の義務化、雇用保険料率の変更だと思います。平成22年から大企業に適用されていた月60時間超の割増賃金率の引き上げが中小企業にも適用され、4月1日から労働させた時間について引き上げの対象となります。 具体的な実務としては、1か月の起算日からの時間外労働時間数を累計して 60時間を超えた時点から50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないことから、就業規則や賃金規程の変更が必要となるほか、カレンダーや出退勤のシステムなどによって法定休日労働と月60時間を超える時間外労働とを明確にした集計管理が必要となります。

 男性労働者の育児休業取得状況の公表の義務化については、常時雇用する労働者が1000人を超える企業について、公表を行う事業年度の直前の事業年度における①育児休業等の取得割合、②育児休業等と育児目的休暇の取得割合のいずれかをインターネットなどで公表することになります。①が原則的な取得割合となりますが、②は①に小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数を加えた算式による割合となります。公表は、事業年度の直前の事業年度の状況について、事業年度終了後おおむね3か月以内に行う必要があることから、たとえば3月決算(事業年度末)の事業所の場合は、6月末までに公表することになります。

 雇用保険料率の変更については、令和5年4月1日から令和6年3月31日の保険料が引き上げとなり、一般の事業の場合、労働者負担は5/1000から6/1000へ、事業主負担は8.5/1000から9.5/1000へ、合計は13.5/1000から15.5/1000へと変更されます。事業主負担のうち、失業等給付・育児休業給付の保険料率は1/1000引き上げられますが、雇用保険二事業の保険料率は3.5/1000のまま据え置きとなります。昨年は10月から保険料引き上げとなったことから、労働保険の年度更新の手続きにあたっての集計作業が煩雑となりましたが、今年は4月からの引き上げとなりますので、実務的にはスムーズに対応できると思います。4月からは社会保険の協会けんぽの保険料が変更となる地域もありますので、給与計算などの対応には十分に注意したいものです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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