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2023年9月14日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」192・令和5年度社労士試験にみる派遣法

Q 令和5年度の社会保険労務士試験に派遣法に関する出題がされたと聞きましたが、どのような内容でしょうか。

koiwa1.png 8月27日に第55回(令和5年度)社会保険労務士試験が実施されました。受験されたみなさん、お疲れさまでした。社労士試験には例年、派遣法関連の問題が数問出題されることが多いですが、今年は以下の出題がありました。試験問題と実務とはもちろん内容や切り口が異なりますが、最近の出題傾向では特に現場の目線からも基本知識の確認や実務への応用の参考にできるものも多いため、この機会にみなさんと一緒に考えてみたいと思います。

選択式

(労務管理その他の労働に関する一般常識)
〔問4〕 2
 労働者派遣法第35条の3は、「派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、□年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(第40条の2第1項各号のいずれかに該当するものを除く。)を行ってはならない。」と定めている。


 正確はもちろん「3(年)」です。派遣法35条の3の条文そのものが聞かれている問題であり、これを1年とか5年と回答する人はまずいないため、いわばボーナス問題だといえます。カッコ書きにある40条の2第1項の例外が、①無期雇用派遣労働者、②60歳以上の労働者派遣、③有期プロジェクト業務の労働者派遣、④日数限定業務の労働者派遣、⑤産休取得等の代替の労働者派遣である点も確実に押さえ、「事業所単位」と「個人単位」の期間制限のルールの違いについて、正確に説明できるようにしたいものです。

択一式

(雇用保険法)
〔問2〕 失業の認定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
 E 受給資格者が被保険者とならないような登録型派遣就業を行った場合、当該派遣就業に係る雇用契約期間につき失業の認定が行われる。


 正解は「×」であり、Eの選択肢は「正しいもの」ではありません。登録型派遣とは、派遣元と派遣先との派遣契約の期間のみについて雇用契約を結ぶ形態をいいますが、この期間は雇用契約関係にあるため、「就職」していた期間となります。受給資格者が被保険者とならないような派遣就業を行った場合、通常は雇用契約期間が「就職」していた期間となるため、失業認定申告書の記載要領などについて説明を行う際にも、受給資格者に対して派遣就業の申告についても説明を行ない、不正受給の防止をはかることとされています。

 なお、職業紹介事業の論点からの出題として、Bの選択肢「許可・届出のある民営職業紹介機関へ登録し、同日に職業相談、職業紹介等を受けなかったが求人情報を閲覧した場合、求職活動実績に該当する」にも、適切に解答したいものです。こちらも誤りとなりますが、通常は求職活動実績として認められるのは求人への応募、ハローワークなどが行う職業相談、職業紹介、許可・届出のある民間事業者や公的機関などが行なう職業相談、職業紹介、再就職のための国家試験の受験などが含まれ、ハローワークや新聞、インターネットなどでの求人情報を閲覧などは活動実績には含まれません。

(健康保険法)

〔問7〕 健康保険法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
 D 一般労働者派遣事業の事業所に登録される登録型派遣労働者は、派遣就業に係る1つの雇用契約の終了後、1か月以内に同一の派遣元事業主のもとでの派遣就業に係る次回の雇用契約(1か月以上のものに限る。)が確実に見込まれる場合であっても、前回の雇用契約を終了した日の翌日に被保険者資格を喪失する。


 正解は「×」であり、Dの選択肢が「誤っているもの」になります。登録型派遣労働者については、行政通達の理解として、派遣就業に係る1つの雇用契約の終了後、最大1か月以内に、同一の派遣元事業主のもとで次回の雇用契約(1か月以上のものに限る)が確実に見込まれるときは、使用関係が継続しているものとして取り扱い、被保険者資格を喪失させないこととされています。

 この点、雇用保険については、1週間の所定労働時間が20時間以上となる労働条件に復帰することを前提として、1週間の所定労働時間が20時間未満、最後の雇用契約から1か月程度経過時点で、所定労働時間が20時間以上となる次の派遣就業が確実である場合は被保険者資格を喪失させないとされていますので、あわせて確認しておきたいところです。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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