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2023年11月16日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」201・「年収の壁」への対応について⑥

Q 「キャリアアップ助成金・社会保険適用時処遇改善コース」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

koiwa1.png いわゆる「年収の壁」への対応策として、「130万円の壁」については前回触れた事業主の証明による被扶養者認定の円滑化がはかられることになり、「106万円の壁」については社会保険適用促進手当の支給が推奨されますが、あわせてキャリアアップ助成金に社会保険適用時処遇改善コースが新設され、一定の取り組みを講じた事業主に対する支援が行われます。社会保険適用時処遇改善コースでは、短時間労働者が社会保険に加入した際の手取り収入の減少に対応するため、賃上げや所定労働時間の延長などの取り組みを行った場合に最大50万円の助成が行われますが、社会保険適用促進手当(社会保険適用にともなう保険料軽減のための手当)も対象となります。

 基本となる手当等支援メニュー(手当等により収入を増加させる場合)の内容は、以下の通りです。事業主が労働者に「社会保険適用促進手当」等を支給した場合、1年目、2年目は賃金(標準報酬月額・標準賞与額)の15%以上分を労働者に追加支給した場合に1人あたり20万円(大企業は15万円)、3年目は賃金(基本給等)の18%以上を増額させた場合に1人あたり10万円(大企業は7.5万円)が支給されます。一事業所あたりの申請人数の上限は撤廃されたため、該当者がいれば何人分でも申請できますが、令和5年10月1日から令和7年3月31日までに事業主が該当する取り組みを行った場合が対象となります。

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 活用ケースとしては、週20時間、年収106万円(時給1016円)の人が新たに社会保険に加入し、保険料16万円と同額の社会保険適用促進手当を支給した場合、賃金の15%以上を追加支給という要件に該当するため、1年目、2年目はそれぞれ20万円(10万円×2回)支給の対象となり、仮に3年目に時給を1199円に引き上げた場合は、賃金の18%以上を増額という要件に該当するため、10万円支給の対象となります。「106万円の壁」への対応として社会保険適用促進手当の支給が有効な手だてとなりますが、手当の支給は相応の事業主の負担となるため、今回新設された助成金を効果的に活用したいものです。

キャリアアップ助成金・社会保険適用時処遇改善コース パンフレット


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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