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2024年2月15日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」214・能登半島地震被災に関する対応について⑥

Q 能登半島地震に伴う雇用調整助成金の特例措置について、具体的な内容が実施されていると聞きましたが、どのような内容ですか。

koiwa24.png 能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整を行わざるを得ない事業主に対する雇用調整助成金の特例措置が実施されています。①生産指標の確認期間を3か月から1か月に短縮、②最近3か月の雇用量が対前年比で増加していても助成対象とする、③地震発生時に事業所設置後1年未満の事業主についても助成対象とする、④計画届の事後提出を可能とする、については、第210回で触れました。今回の特例措置のうち、これら以外の事項は以下の通りです。

①休業・出向を実施した場合の助成率の引き上げ   
【中小企業】 2/3 → 4/5 【大企業】1/2 → 2/3   
(新潟県、富山県、石川県、福井県の事業所が対象)

②支給日数を「1年間で100日」から「1年間で300日」に延長   
(新潟県、富山県、石川県、福井県の事業所が対象)

③新規学卒採用者など、雇用保険被保険者として継続して雇用された期間が6か月未満の労働者についても助成対象

④過去に雇用調整助成金を受給したことがある事業主であっても、  
(a)通常、支給日数は3年間で通算150日までのところ、今回の特例の対象となった休業等については、制限は適用しない  
(b)前回の対象期間の満了日の翌日から1年を経過していなくても助成対象とする

⑤休業等規模要件(対象労働者の所定労働日数に対する休業等の延日数の割合)を緩和   
【中小企業】 1/20以上 → 1/40以上 【大企業】 1/15 → 1/30   
(新潟県、富山県、石川県、福井県の事業所が対象)

⑥残業相殺(支給対象となる休業等から所定外労働の時間を相殺して支給すること)を撤廃


 特例措置は能登半島地震に伴う経済上の理由により休業や出向などを行う事業主が対象となり、休業や出向などの初日が令和6年1月1日から令和6年6月30日までの間にある場合に、事業主が指定した1年間の対象期間について、実際に休業などを行った支給対象期間(休業の場合は1つの判定基礎期間または連続する2つないしは3つの判定基礎期間、出向の場合は出向期間を6か月ごとに区分した各期間)ごとに申請することが必要となります。雇用調整助成金の通常の要件と今回の特例措置について、以下に比較表をまとめます(「4県」は新潟県、富山県、石川県、福井県を指します)。

通常の要件 能登半島地震特例措置
対象事業主 経済上の理由により事業活動を縮小した事業主(全国) 能登半島地震に伴う経済上の理由により事業活動を縮小した事業主(全国)
対象労働者 雇い入れ6か月未満は対象外 雇い入れ6か月未満も対象
生産指標要件 最近3か月間の月平均値が前年同期比10%以上低下(事業所設置後1年未満は対象外) 最近1か月間の月平均値が前年同期比10%以上低下(事業所設置後1年未満も対象)
雇用量要件 最近3か月間の月平均値が前年同期と比べて一定規模以上増加しないこと 撤廃
対象となる休業の規模 大企業1/15以上
中小企業1/20以上
大企業1/30以上
中小企業1/40以上
(4県)
支給日数 1年100日、3年150日 1年300日
(4県)
助成率 大企業1/2
中小企業2/3
大企業2/3
中小企業4/5
(4県)
クーリング要件 過去に雇用調整助成金の支給を受けた対象期間満了の日の翌日から起算して1年を超えていること 撤廃
残業相殺 所定外労働があった場合、休業などの実績から差し引く 撤廃
(4県)
計画届 事前の提出が必要 計画届の提出日が令和6年3月31日までの間である場合は、事前に提出したものとみなす


 特例措置の内容は多岐に渡っており、4県に限定される特例とそれ以外とがあるためかなり複雑ですが、雇用の維持をはかるためにも該当する要件を正確に確認して有効に活用したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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