コラム記事一覧へ

2024年2月29日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」216・組織再編と派遣事業許可の取り扱い

Q 会社の合併や分割などの組織再編にあたっての労働者派遣事業許可の取り扱いについて教えてください。

koiwa24.png 会社の組織再編にはさまざまな種類がありますが、派遣事業許可について特に注意が必要なのは、「合併」と「会社分割」です。合併は、合併後に事業を行う会社が既存の会社であるか、新たに設立した会社であるかの違いにより、「吸収合併」と「新設合併」に分けられ、会社分割は、その方法により「吸収分割」と「新設分割」の2種類に分けられます。以下、類型ごとに簡単に整理します。

(1)吸収合併

 吸収合併では、消滅する法人(以下「消滅法人」)が派遣事業の許可を持っており、その消滅法人の事業所において、合併後存続する法人(以下「存続法人」)が、引き続き派遣事業を行う場合等には、次の手続きを行う必要があります。

①合併前に存続法人が派遣事業の許可を受けておらず、かつ、消滅法人が許可を受けている場合で、合併後に存続法人が派遣事業を行う場合

 存続法人は、新規で派遣事業の許可を申請する必要があります。その際、派遣事業の許可の期間に空白が生じることを避けるために、合併の日付と同日付で許可を受けることが可能となるようにしなければなりません。

②合併前に存続法人が許可を受けている場合で、合併後に存続法人が派遣事業を行う場合

 新規で許可申請を行う必要はありません。ただし、合併に際して法人の名称等が変わったりした場合は変更届出を、事業所の新設を行う場合はその届出を行います。

③上記②の場合において、存続法人および消滅法人がともに合併前に許可を受けており、かつ消滅法人の事業所において、合併後に存続法人が引き続き派遣事業を行う場合の特例

 合併後の存続会社の事業所数が、合併前の存続会社および消滅会社の事業所数を合算した数以下であるときは、特例として許可基準の資産要件(純資産2000万円×事業所数)にかかわらず、事業所の新設をすることができます。

(2)新設合併

 新設合併では、消滅法人が派遣事業の許可を持っており、合併により新たに設立される法人(以下「新設法人」といいます)が、引き続き派遣事業を行おうとする場合は、新規で許可申請をすることが必要です。

 この場合、(1)吸収合併①と同様の手続きにより事前に許可申請を行うことになりますが、申請の時点においては新設法人はまだ設立されていないため、特例的に合併後の予定に基づいて申請書等を記載し、その上で新設法人設立後、予定どおり設立された旨を報告することになります。

(3)吸収分割

 吸収分割では、分割する法人(以下「分割法人」)の営業を承継させることになりますが、この場合において、吸収分割により承継を受けた法人(以下「分割承継法人」)が、引き続き派遣事業を行おうとする場合は、(1)吸収合併に準じた手続きを行うことが必要です。

 すなわち、分割前に分割承継法人が派遣事業の許可を受けていない場合で、分割後に派遣事業を行う場合は、新規での許可申請が必要です。一方、分割前に分割承継法人が許可を受けている場合は、新規での許可申請を行う必要はありません。

(4)新設分割

 新設分割では、分割により新たに創設した法人(以下「分割新設法人」)に、分割法人の営業を承継させることになりますが、分割法人が派遣事業の許可を有しているときであっても、分割新設法人が派遣事業を行う場合は新規許可が必要となります。その際の手続きは、(2)新設合併に準じて取り扱うことになっています。

 いずれの手続きの場合でも、許可の期間に空白が生じることになれば、事業の運営、派遣労働者の就業に大きな支障が生じることになるため、組織再編を計画する段階で、万全を期して派遣事業許可の申請に要する期間を加味したスケジュールを組み立てていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

  • 会員限定メールサービス「triangle」
  • 労政インタビュー
  • 実務詳解 職業安定法
  • 実務詳解 職業安定法
  • 人材ビジネス総合支援システムORIDA
  • FLJ
  • 社会保険労務士法人すばる
  • CROSS STAFF
  • 社労士法人ユアサイド中宮伸二郎
  • 労働新聞社
  • 三松堂株式会社
  • ワイン
  • HRMマガジン

JAPAN PRIVACY CONSULTANTS ASSOCIATION

PAGETOP