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2024年4月18日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」223・求職者等への職場情報提供に当たっての手引②

Q 求職者等への職場情報提供に当たっての手引きについて、具体的な活用方法としてはどのような点が考えられるでしょうか。

koiwa24.png 「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の内容については、前回のコラムで概要を紹介しました。今回は、同手引の構成を確認する中で、実務の現場における活用方法に触れたいと思います。冒頭の「本手引の策定に当たっての背景及び基本的な考え方」では、「『職場情報の開示』に限定することなく、企業等が職場情報を提供するに当たって、求職者等が求める情報を例示することや、企業等における一般的な課題や対応策を整理し、各企業等がよりよい採用活動を行う上で参考とできるよう、『求職者等への職場情報提供に当たっての手引』を策定することとした」という経緯が示されています。そして、さまざまな労働関係法令で定められている開示項目が複雑に入り組んでいることから、「求職者などに分かりやすく一元的に整理することとした」としています。

 「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」の目次は、以下の通りです。

<目次>
1. 本手引の策定に当たっての背景及び基本的な考え方
2. 労働関係法令等において定められている開示・提供項目等
(1) 労働者の募集に当たって開示・提供する必要があるもの
(2) 労働者の募集の有無にかかわらず定期的な公表が求められるもの又は公表することが望ましいとされているもの
(3) 資本市場において企業等が提供する非財務情報(人的資本関係)
3. 求職者等が開示・提供を求める情報等
(1) 求職者等が開示・提供を求める情報の内容
(2) 職場情報の提供の単位
4. 提供に当たっての課題や対応策
(1) 職場情報の提供時期・提供方法
(2) 提供する情報の量
(3) 資本市場における人的資本に関する情報の活用について
(4) 数値情報の提供
(5) 実績が低調な取組等に係る情報の提供
(6) 情報の正確性
(7) 求職者等への情報提供に係る支援
(8) 中小企業等における情報発信
別表1
別表2
別表3


 「4.提供に当たっての課題や対応策」の「(2)提供する情報の量」では、「幅広い情報の開示により、応募段階で一定のマッチングが行われ、その後の選考過程が円滑に進められる利点も考えられるが、一方で、詳細の情報までを予め開示することで、必要以上に応募者を限定してしまう可能性がある」という見立てが示されていますが、この点は現場目線でも頷けるところだと思います。情報提供の時期として、以下の2パターンが提起されています。

【例1】応募段階(求人票や募集情報)では「企業全体」の働き方等に関する情報を提供し、選考段階において「部署単位等」の働き方等に関する情報を提供する。

【例2】応募段階(求人票や募集情報)では数値情報や取組状況を提供し、選考段階において、補足として職場の雰囲気等の定性的な情報を提供する。


 あくまで一例として示されているものではありますが、企業の具体的な採用・人事のフローを考えるとき、「応募段階」と「選考段階」における応募者などへの情報提供をめぐっては悩ましい論点も少なくないことから、このような類型から示唆を得るところは大きいでしょう。必ずしも企業全体の情報→部署単位の情報、定量的情報→定性的情報といった類型に当てはまるケースばかりではないにせよ、自社の現状のフローを確認することを通じて、今後の採用戦略を見据えた情報提供のあり方を検討・実施するひとつの手がかりにしたいものです。


「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」(令和6年3月、厚生労働省職業安定局)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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