「経験」を「資本」に昇華させる方法論
著者・白井 旬
合同フォレスト、定価1870円(税込)
「経験の資本化」を提唱し、300社・5万人以上を支援してきた著者が「人的資源管理」から「人的資本経営」へ大転換させる方法論を語る。
「事業の発展=人的資本×社会関係資本(信頼関係・ネットワーク)×心理的資本(自己効力感・未来への希望)」「個人の活躍=能力×状態(職場・個人)」といった独自の方程式を考察の柱に据え、経営要素を抜き出し、定義づけ、改めて構造化し言語化していく緻密さには驚かされる。リスキリング等の流行の施策に走っても従業員たちの行動変容がなければ人的資本は高まらないと指摘。ゲーム(「ドラクエ」「パワプロ」「信長の野望」)を例に経験の蓄積が個人と組織を強くする関係を示したうえで「経験は自動的に資本化されない」ゆえ、個々の経験を可視化・言語化し、企業と個人の両者の資本として生かすプロセスが必要だと力説。具体的な声かけ・フィードバックのセリフも列挙する。
一貫して対象物事を論理的に切り分けつつも、抽象概念に踊らない思考の巧みさと内容密度の濃さに圧倒される。
(久島豊樹/HRM Magazine より)