コラム記事一覧へ

2025年7月24日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」286・2025年の年金制度改革⑥

Q 年金制度改革法に盛り込まれている項目のうち、私的年金制度の見直しについては、具体的にどのような内容でしょうか。

 年金制度改革法(社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律)が、6月13日の参院本会議で可決成立し、順次施行されます。今回は、以下の内容のうち、私的年金制度の見直しについて触れます。

1.被用者保険の適用拡大等
2.在職老齢年金制度の見直し
3.遺族年金の見直し
4.厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引き上げ
5.私的年金制度の見直し など

koiwa24.png
 今回の年金制度改革法に盛り込まれている私的年金制度とは、iDeCo(個人型確定拠出年金)のことをいいます。従来iDeCoへは60歳までしか掛金を拠出することができなかったため、一定の年齢以上になって加入することのメリットが少ないという現実がありました。定年延長や再雇用が進み、さらに高齢者への雇用の期待が高まる昨今、60歳未満までに限定という制度が、現実の雇用慣行などと乖離しつつあるという声も少なくありません。今回の改正で、実際に老齢給付を受けていない場合には、60歳以降であっても掛金を継続できるようになることで、iDeCoへの期待がさらに高まると思われます。

 具体的には、60歳以上69歳未満の人が、引き続き掛金を拠出できる対象となります。人生100年が叫ばれる時代、60歳が職業人生のゴールだと考える人はすでに少数派であり、すでに60歳代の人がさまざまな立場や場面で活躍するのが当たり前という時流の中で、60歳以降も働きながら老後の資金をコツコツと増やしたいと考える人にとっては、大きなメリットが感じられる改正だといえるでしょう。

c250724.jpg

 現在、老齢基礎年金の受給開始は原則65歳となっています。このことから考えると、60歳以降も継続してiDeCoに掛金を拠出することは、実際の就業とライフスタイルに合致した運用方法だといえます。さらに、年金の繰下げ受給と組み合わせることで、70歳まで就業するという目標を掲げながら、無理なく老後の生活資金を確保することができます。企業としても、経験豊かで優秀な高齢者の人たちに引き続き活躍してもらうことで、人手不足の解消や技術承継、現場のマネジメントの充実などに寄与できるだけなく、高齢者本人のライフスタイルに新たな可能性を見出す契機にもなると考えられます。

(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP