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2026年5月 7日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」326・第3号被保険者の見直しの議論②

Q 第3号被保険者や被扶養者制度の見直しについて、国の審議会でも議論になっていると聞きますが、具体的にはどうなのでしょうか。

koiwa24.png 前回は、国政において第3号被保険者制度の見直しをめぐる議論が加速しつつある現状について触れました。このような流れは、国の審議会などにおいてもみられ、4月28日に開催された財務省の財政制度等審議会財政制度分科会においても、第3号被保険者や被扶養者制度の見直しについて、少し踏み込んだ議論がされています。以下、同審議会の資料から抜粋します。

「被扶養者」制度の見直しについて
 被用者保険における被扶養者制度は、戦時中に誕生した後、家族観や扶養意識の変遷等の中で見直しが図られてきた。核家族化や共働き世代の増加も背景に、社会保険制度の個人単位化が求められる中、公的年金制度の第三号被保険者制度のみならず、医療保険における「被扶養者」のあり方についても見直しを検討すべきではないか。(4月28日、財政制度等審議会財政制度分科会「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」)


 同資料では、第3号被保険者とともに健康保険の被扶養者制度から社会保険制度全般をめぐる家族給付のあり方について言及されており、被用者保険の加入者約6800万人のうち、2500万人以上を占める被扶養者について、問題提起されています。被扶養者制度の経緯についても、1922年に健康保険法が制定された当初は保険給付の対象は被保険者本人のみの全額給付であり、1942年に家族療養費として家族給付が法定化(5割負担)され、1973年に被用者本人は1割負担、被用者家族は3割負担となり、2002年に被用者本人と家族の負担割合が統合(3割負担)されて今日に至っている制度の変遷が、分かやすく解説されています。

 また、健康保険の被扶養者制度については、健康保険法では保険給付は被保険者に対して支給することになっており(第110条)、制度上は被扶養者には権利が与えられていない建て付けとなっているため、医療費通知も被扶養者分が被保険者にまとめて通知されてしまい、個人情報保護の観点からも問題が生じうることなども指摘されています。このような提起がただちに第3号被保険者や被扶養者制度の抜本的な改正に結びつくかどうかはともかく、タブーなく議論の対象として国民の総意をはかりながら具体的な見直しを視野に入れていこうという機運の高まりをみることができるでしょう。

 なお、第3号被保険者制度の見直しの議論については、最近になって急に始まったものではなく、経済団体や労働組合などにおいても従来からさまざまな提言や問題提起が行われています。経済同友会は、「女性の就労意欲やキャリア形成を阻害し、男女間の賃金格差を生む大きな要因にもなっている第3号被保険者制度を廃止することで、多くの女性が潜在能力を発揮し、労働供給制約を解消する」(「現役世代の働く意欲を高め、将来の安心に備える年金制度の構築」2024年12月)としています。

 また、連合は、「働き方やライフスタイルが多様化する中で、配偶者の働き方などにより第3号被保険者に該当するかが決まる現行制度は、中立的な社会保険制度とはいえない。また、制度上の男女差はないものの、現状は第3号被保険者の大半を女性が占めていることから、女性のキャリア形成を阻害し、男女間賃金格差を生む原因の一つと考えられる。社会保険の原理原則や負担と給付の関係性も踏まえ、第3号被保険者制度は廃止すべきである」(「働き方などに中立的な社会保険制度(全被用者への被用者保険の完全適用、第3号被保険者制度廃止)に対する連合の考え方」2024年10月)としています。

 これらの提言はあくまで個別の団体などの見解もしくは意見ではありますが、政治や行政の動向なども相まって、見直しの議論自体は全体として加速する流れにあることは間違いないでしょう。これからの時代の仕事をめぐるライフスタイルや家族のあり方などにも思いをめぐらせながら、議論のゆくえを見守っていきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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