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2015年5月25日

管理職になりたい女性は少数派

「女性活躍推進」の政府とギャップ

 管理職になんかなりたくない――。最近、ビジネスウーマンを対象にした人材ビジネス企業による意識調査で、管理職を敬遠する女性の多いことが相次いでわかった。政府は「日本再興戦略」などで女性の活躍を目玉政策に据え、「女性活躍推進法案」も国会で審議入りしたが、女性自身の意識とのギャップが目立つ結果となっている。(報道局)

 インテリジェンスHITO総合研究所がこのほど発表した管理職への意識調査によると、管理職に「なりたい」人の24.4%に対して、「なりたくない」人は75.6% に上った。調査は今年1月、全国の正社員として働く25~44歳の女性1058人に対してネットで実施した。

 キャリアの志向性に基づき「自分を内外からバランスよく見ている」「自分の生き方に悩んでいる」「何についても平均的にこなす」「自身と外部の仕事の評価にギャップを感じている」の4タイプに分けたところ、バランスタイプと内外ギャップタイプの女性は「なりたい」人が各34.6%、39.7%に増えるが、悩みタイプと平均タイプになると各8.8%、21.3%まで下がった。

is150525.jpg 積極型では「より責任の重い仕事がしたいから」を理由に挙げた人が多かった半面、消極型では「肩書がほしいから」と答える人が多いなど、タイプにより管理職に対する考え方がかなり異なることが分かった。同研究所では「女性の活躍を推進して管理職比率を高めるためには、各タイプの特徴や価値観にあわせたマネジメントの支援が必要」と分析している。

数字の“押し付け”より、先に「環境整備」が求められている実態

 同様に、パソナキャリアカンパニーがこのほど発表した「女性リーダーに関する調査2015」によると、企業の女性非管理職の半分以上は「管理職を敬遠」しているが、「職場環境などの好転」があれば管理職を目指したいと考えていることが明らかになっている。調査は4月下旬、企業の主任以上の女性管理職1000人(20~49歳)を対象にネットで実施。

 その中で、「今より上の役職を目指したい」と思っている人は49.0%で、残る半数以上は敬遠していることがわかった。敬遠する人の役職別では、管理職(課長クラス以上)が49.0%だったのに対して、非管理職(主任、係長クラス)は56.3%にのぼった。

 しかし、職場環境が改善すれば管理職を目指す人も少なくなく、具体的には「社員のワーク・ライフ・バランス実現に力を入れている」(47.1%)、「過度な長時間労働がない」(41.9%)、「役割相応の報酬がある」(36.9%)などを条件に挙げている(複数回答)。

 政府は成長戦略の一環として女性の活躍を目玉政策に掲げ、2013年の「日本再興戦略」では「20年までに社会の指導的地位に占める女性比率を30%程度に」増やす基本方針を策定し、翌年の改訂版で「女性活躍推進法」の制定を決定した。企業に女性管理職比率を上げるよう、経団連などに数値目標の設定などを要請するとともに、同法案を今国会で成立させる予定だ。

 しかし、二つの調査からは、当の女性管理職や管理職予備軍の女性たちにとって管理職の魅力はそれほどなく、責任の重大さや長時間労働によるストレスなどの方が重くのしかかっていることがうかがわれ、「会社人間」の多い男性とはかなり意識が違うようだ。女性に一層活躍してもらうには、調査が指摘している「環境整備」がカギになることは間違いない。

※文中の写真は、 「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」の「管理職の重要性と育成のあり方に関する提言」に関する成果報告会。女性の活躍推進も分科会のテーマのひとつとなった(2014年11月18日・東京、中央大駿河台記念館)

 

【インテリジェンスHITO総合研究所による管理職への意識調査】

【パソナキャリアカンパニーによる「女性リーダーに関する調査2015」調査】
 

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ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト
「管理職の重要性と育成のあり方」を提言(2014年12月15日)

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