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2016年10月17日

サポートセンター「2016年雇用問題フォーラム」の記録(1)

派遣・請負問題を冷静に考察した8年間の活動と発信

 NPO法人・人材派遣・請負会社のためのサポートセンター(高見修理事長)が主催する「雇用問題フォーラム」が(アドバンスニュース協賛)が10月3日、東京都内で開かれた=写真。テーマは「これからの雇用社会と人材サービスの役割」で、今年の4月から、企業経営における労使関係に視点を置いて3回にわたって開催してきた「派遣・請負問題勉強会」の締めくくり。また、同センターの8年間におよぶ活動の「ひと区切り」と位置付ける集大成のフォーラムとあって、人材サービス関係者や企業の人事担当者をはじめ、社労士、研究者、マスコミなど300人を超える参加者が集まり、それぞれの視点から知見を深めた。同センターのこれまでの歩みとフォーラムの様子を4回連載で記録する。(報道局)

NPO設立に至る経緯と目的、「ひと区切り」の理由

is161017.jpg 同センターは、UAゼンセン人材サービスゼネラルユニオン(JSGU)の支援を得て、2008年秋に発足、翌09年から活動を本格化させた。リーマン・ショックに端を発する「派遣切り」が社会問題化した時期で、派遣制度の問題点のみならず、派遣という働き方まで否定する「派遣=悪」という感情論的な見方が拡大。こうした派遣労働に対する偏見に対処するため、労働組合の枠を超え、広く社会に向けて人材サービス産業の健全な発展と働く人の社会的地位向上を目指した。

 活動の柱に、(1)社会・マスコミに対する「正しい理解と偏った見方の是正」、(2)人材サービス業界に対する「健全な発展と派遣労働者の地位向上」、(3)派遣法に対する「労働者の保護を主軸とした法制度の確立」――の3つを掲げた。その中心的な動きとして、雇用・労働問題をともに冷静に考える「派遣・請負問題勉強会」を実施。毎年、世の中の情勢に照らした年間テーマを設定し、年に4~5回、各界の学識者らを講師に招いて時宜を得た勉強会を開催したほか、講演内容を年ごとに冊子にまとめて広く配布してきた。

 本格始動から8年。この間、派遣法をめぐっては2度の政権交代を挟み紆余曲折をたどり、昨年9月の「平成27年改正」にまずは“着地”した。まだ、多くの課題はあるものの、事業の許可制一本化や派遣労働者への雇用安定措置、キャリア支援の強化と義務付けなどが盛り込まれ、基本的に働く人に視点を置いた内容であったことなどを踏まえ、今年で現在の勉強会という発信方法は「ひと区切り」とした。来年以降の活動手法は、政治や経済、労働法制の動きをみて検討していく方針だ。

これまでの年間テーマと開催実績

【2009年】 日雇い派遣の原則禁止だけでなく、登録型派遣や製造業派遣の原則禁止などを盛り込んだ派遣法改正案の提出をにらみ、現実を見据えた冷静な議論が進むことを切望。初年の勉強会として、規制強化と緩和の両方の視点と主張を整理したうえで、計6回、全9人の識者から問題提起や政策提言を受けた。

【2010年】 人材サービス企業の経営者や関係者らへの情報提供として、①経済・社会の環境変化(時代認識)、②派遣法改正に関する課題――の2点を意識し5回開催。延べ11人の識者に登壇してもらい、参加者が雇用環境の変化などについて考えた。

【2011年】  この年の3月11日に発生した東日本大震災を受け、実施計画を急きょ見直し、7月に1回だけの開催に変更。テーマは「東日本大震災の雇用への影響と人材ビジネスの役割を考える」とし、震災に伴う今後の雇用問題や、就労支援の現状と課題などについて、講師とともに役割を探った。

【2012年】 年間テーマを「正規・非正規雇用をめぐる新たな動きと今後の人材ビジネスを考える」に据え、4回にわたり労働市場の変化や労働経済と人材育成などを深掘りした。この年の「まとめ」としてパネルディスカッションも開いた。

【2013年】 「人材ビジネスの今後の展開を考える」をテーマに4回開催。安倍政権の経済政策と雇用政策をはじめ、キャリア開発の展望や労働法制の動きを学んだ。

【2014年】 「今後の雇用社会と労働者派遣という働き方」について、法学と経済学のそれぞれの観点から4回にわたって考察した。女性活躍支援や働き方改革の視点も盛り込んで開催した。

【2015年】 前年の視点をつなぐ形で、1回につき2人の講師を招く勉強会を3回、また「雇用改革の議論の行方とこれからの雇用社会」をテーマにフォーラムを開き、欧米の現状から見る問題点とあるべき姿などについて掘り下げた。

【2016年】 派遣法の「平成27年改正」を踏まえ、派遣事業者が自ら雇用する派遣労働者とより良い労使関係の構築がこれまで以上に求められていると考え、「改正派遣法施行後の新たな課題―企業経営における労使関係を考える」をテーマに3回の勉強会と、集大成となるフォーラムを開催した。

 この「2016年雇用問題フォーラム」は、 逢見直人・連合事務局長が特別講演(時局講演)し、続いて、濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構主席統括研究員、水町勇一郎・東大社会科学研究所教授、佐藤博樹・中央大大学院戦略経営研究科教授の順に講演。その後に、濱口、水町、佐藤の3氏が一緒に登壇して、参加者との質疑応答を行った。

 次回以降の『インタビュー&スペシャル』では、登壇者の発言要旨などを紹介していく。

 

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