スペシャルコンテンツ記事一覧へ

2017年9月11日

テレワーク普及に多くの課題

勤怠管理など、企業の手間多く

 空前の人手不足の緩和策として、企業などの注目を集めているテレワーク。本社・支店などのオフィスでフルタイム勤務するのではなく、モバイルワーク、自宅、サテライトオフィスといった場所でパート勤務も可能な働き方だ。政府も多様な働き方を促進する一策として普及に努めているが、なかなか広がらない。その可能性と課題を探った。(報道局)

 労働力の需給は厳しくなる一方だ。厚生労働省の有効求人倍率(季節調整値)は7月が1.52倍で43年ぶりの高倍率となり、正社員の求人倍率も6月、7月と1倍を超えた。総務省の労働力調査でも、7月の就労者数は6563万人で、完全失業率は2.8%の「完全雇用」状態に近づいており、「人口減少のペースを考えると、これ以上、就労者数は増えない」という観測もある。一方で、就労意欲のある完全失業者は7月にもまだ191万人いて、求人企業とのミスマッチが解消されれば、さらに増える余地はある。

 多くの日本企業は現代でも、社員は自宅からオフィスへ通勤して仕事をするのが普通。これだと、育児や介護を担っている主婦、病気療養中の人、通勤が困難な高齢者といった人々にとっては、仕事をする意欲や能力があっても就労は困難だ。テレワークは、そうした層の人たちの就労を実現する手段となり、企業にとっても人手不足の緩和につながることから、政府も「テレワークガイドライン」の作成など、さまざまな政策で後押ししている。

 総務省の2017年版「情報通信白書」によると、テレワークを導入・導入予定の企業は16年時点では13%程度にとどまり、残る8割余りは導入せず、その予定もないという。規模では従業員300人以上の企業では3割が導入済み・導入予定だが、300人以下の中小企業になると1割以下になる。テレワークの形態は6割ほどがモバイルワークで、在宅勤務は23%、サテライトオフィスは16%程度に過ぎず、本格的な導入にはほど遠いのが実態だ。

 企業側によると、テレワーク導入における課題は「情報セキュリティー」「適正な労務管理」「適正な人事評価」「社員同士のコミュニケーション」などが多い。要するに、「上司や同僚と離れた場所では、きちんと働いてもらっているかどうかの把握がむずかしい」ということのようだ。また、「毎日顔を合わせ、チームで業務を進める」という日本の職場風土になじまないと感じる企業も少なくない。

注目されるサテライトオフィス

sc170911.png こうしたテレワークの課題を解決できる方策として、サテライトオフィスへの注目度が高まっている。ただ、多くの人数で同質の業務をこなすコールセンターなどで導入している企業は増えているものの、事務系や営業系の職種までは広がっていない。オフィスを構えるには、設置場所や業務区分など、ある程度まとまった人数がないと導入するメリットが少ないためだ。

 しかし、複数の企業から業務を受託している人材サービス企業であれば、ある程度まとまった人数を一つのオフィスでまとめることができ、委託先の企業も安心できる。大手のパーソルグループはこの点に着目し、4月からさいたま市浦和区に職住接のサテライトオフィス「ジョブシェアセンター」を試験開設。複数社からの受託業務を切り分け、フルタイム以外の短時間勤務も可能にしており、現在、近くの主婦ら約30人が勤務している=写真。これが軌道に乗れば、首都圏のほかの地域にもサテライトオフィスを開設する計画だ。

 同グループのパーソル総合研究所(渋谷和久社長)はこのほど、「サテライトオフィス設置による雇用創出推計」を発表。人口減少下で今後も年間0.8%程度の経済成長が続くと、不足する労働力は16年の約248万人から25年には約583万人に拡大すると予測。しかし、サテライトオフィスの設置によって、育児中の女性を中心に約136万人の就労が可能になり、人手不足の緩和に役立つと推計している。
 

PAGETOP