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2018年4月 9日

フリーランスの法的保護は

公取委、厚労省が報告書

 企業などと雇用契約を結ばないフリーランス(独立個人事業主)が増えており、政府は法制面でどう保護するか検討を始めた。政府は働き方改革の一環として、多様で柔軟な働き方のできるフリーランスを後押ししているが、労働基準法など既存の労働法制は適用されないことから、どのような形で保護できるか模索中だ。(報道局)

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フリーランスは今後も増え続ける

 フリーランスはプロスポーツ選手、芸能人、フリーライター、科学技術者、運転手などが代表的な職業だが、近年はプログラマー、ソフト制作者、デザイナー、イラストレーターなどの新職種も急速に増えている。しかし、雇用されている労働者と異なり、労働時間、最低賃金、健康管理といった保護制度は適用されず、多くは業務委託などの契約に基づいて仕事をしている。このため、仕事の内容や報酬などでのトラブルも絶えず、何らかの保護策が必要との声が強まっていた。

 まず、「公正な契約」の観点から公正取引委員会が2月、有識者会議「人材と競争政策に関する検討会」(泉水文雄座長)で報告書を公表し、独占禁止法に基づく保護策となる運用指針を打ち出した。これは、複数企業によるフリーランスへの報酬取り決めや移籍・転籍の制限、企業による優越的地位の乱用や実際と異なる条件提示などが独禁法に抵触するという内容。独禁法は、通常は企業間の競争政策が対象だが、今回、労働分野にまで踏み込んだのは極めて異例だ。

 一方、厚生労働省も有識者会議「雇用類似の働き方に関する検討会」(鎌田耕一座長)が3月に報告書を出した。こちらは、「労働者」の規定、諸外国の事例などがメーンで、具体的な法規制の内容までは踏み込んでいない。その主要因がフリーランスの実態が多様で、「雇用類似の働き方」をしている人がどれぐらいいるのか、といった基本的な内容もまだ十分にわかっていないためだ。

sc180409_1.png クラウドソーシングのランサーズ社が4日に発表した2018年版実態調査によると、広義のフリーランスは約1119万人、報酬などの経済規模は約20兆円と推計。内訳は副業系(すきまワーカー)が454万人、自営業系(独立オーナー)が322万人、複業系(パラレルワーカー)が290万人などとなっている=グラフ。複業系の増加が顕著で、「能力が生かせる」という点で全体の満足度が高い、と報告している。

 しかし、同調査は「広義の」フリーランスを対象にしており、「副業系」が最も多いこともあって、保護政策の対象としてはさらに絞り込む必要がありそうだ。副業の場合、ある企業に雇用されている労働者が、週末などに仕事をする「アルバイト」が多数に上るとみられ、労働者保護の観点からはすでに「守られて」いるとみるのが妥当。一家の稼ぎをフリーランス就労だけで担う層とは事情が大きく異なる。

 雇用類似働き方検討会の議論に合わせて、労働政策研究・研修機構が3月に実施した「独立自営業者の就業実態調査」では、年間報酬の最多層は「50万円未満」の40%で、そのうち「兼業」が過半数を占めた。それを含めた「200万円未満」だけで6割を超え、「専業」とみられる「600万円以上」は1割程度だった。

強い法規制はなじまない?

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