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2019年1月28日

不正調査の混乱、いつまで?

厚労省の毎月勤労統計

 厚生労働省の毎月勤労統計の不正調査問題は、収拾の見通しが立たなくなっている。真相究明のために設けた特別監察委員会の報告書で幕引きを狙った政府だったが、24日に開いた国会の閉会中審査で調査方法の不備などを指摘され、“差し戻し”となったためだ。28日に召集される通常国会で取り上げられるのは必至で、事態は統計問題から政治問題に発展、変質する可能性が出てきた。(報道局)

sc190128.jpg 報告書によると、同統計の不正は2004年から始まり、全数調査しなければならない東京都内の大企業(従業員500人以上)約1460社のうち、3分の1程度の約500社だけを対象に抽出調査したうえ、集計時の復元作業を怠った。大企業の給与水準は高いため、月々の「現金給与総額」など賃金の公表値は実際より低目に出ていた。

 さらに、昨年1月分の集計から対象企業を入れ替えてデータ復元を実施したが、それ以前の分の復元はしなかったため、前年比が高めに出るようになった。とくに、昨年6月の給与総額は前年同月比3.3%増という「21年ぶりの高い伸び」として注目されたが、不自然な伸びにエコノミストらは首を傾げていた。

 昨年暮れ、政府統計を統括する総務省の指摘で問題が発覚。厚労省は年明けから数値の再集計、同統計を基に算出される雇用保険などの不足分の追加支給、新年度予算案の組み替えなどを決め、外部識者による特別監察委員会(樋口美雄委員長)を設置し、同委員会は22日に報告書を出した。これで「一件落着」の予定だった。

 ところが、衆参の厚生労働委員会で、報告書作成のための一部省内関係職員の聞き取りを、監察委員ではなく「身内」の同省職員が行い、問題となった東京都への聞き取りなどはしていなかったことが明らかになり、「客観性を欠く」として差し戻され、監察委は再調査を余儀なくされるという異例の事態になっている。また、報告書では「組織的な隠蔽は認められなかった」としているが、国会ではそれも疑問視しており、今のところ着地点は見えていない。

幻となった「3.3%増」の奇跡

 厚労省は23日、昨年11月分の確報値を発表し、それに合わせて12~18年の7年分の修正値も発表、誤数値とも対比させている。現金給与総額に限ってみると、金額はすべての月で上方修正され、過去に公表した誤数値との乖離額はほぼ1000~5000円、乖離率は0.3~1.2%の幅となっている。

 問題は前年同月比で…

 

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