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2020年5月18日

新型コロナで政府、「感染防止」と「経済再起」の両面探る

雇調金、小出しの拡充・簡素化で事業者「困惑」

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止で止まっていた経済活動が、段階的に動き始める。政府は5月14日、39県の「緊急事態宣言」を解除。同21日と28日をメドに、東京や大阪など残る8都道府県の解除についても判断する見通しで、「感染拡大防止」と「経済活動再起」の両面を探る。コロナ禍の雇用対策に注目すると、一拍遅いうえに小出しの拡充と要件緩和が短期間で目まぐるしく更新され、企業存続と従業員を守ることに懸命な事業者は困惑している。(報道局長・大野博司)

 感染による致死率をはじめ、欧米各国に比べて爆発的な拡大を食い止めている日本。5月中旬以降は、新型コロナの「第2波」を警戒しつつ、08年のリーマン・ショックをはるかに超える経済的ダメージを回復させていくことが至上命題となる。雇用不安をできるだけ和らげることが再起に向けた原動力となるが、政府の支援策には「スピード感が足りない」との不満が多く聞かれる。

sc200518.jpg 4月7日の「緊急事態宣言」発令の会見で、安倍晋三首相は「雇用と生活を守る」と明言したが、支援策の柱のひとつとなる雇用調整助成金(雇調金)の拡充と手続きの簡素化をめぐっても、事業者と従業員に一定の安心感を与える動きがとれていない。雇調金は、雇用を維持しながら従業員に休業手当を支払う企業に国が一部を助成する制度。長く活用されている仕組みで、リーマン・ショック時や11年の東日本大震災などの有事の際には、「特例措置」を講じて助成率などを拡充。その役割を果たしてきた実績がある。

 雇調金にいま、事業者から戸惑いの声があがっているのはなぜか。政府は当初、支給要件の緩和に着手し、4月下旬には助成率や対象業種、対象者、被保険者期間などについて慌ただしく追加拡充。活用を強く促す政府に呼応して、一部の事業者が社会保険労務士に相談するなど一旦準備していた申請書類の手直しに入るも、今度は第2次補正予算案に助成金の日額上限を1日8330円から倍額の1万5000円まで引き上げる大幅な拡充策が盛り込まれ、保障割合(額)など総合的な判断に再び迷う事業者の姿も散見される。一方、申請手続きも段階的に簡素化されているものの、現状は「とても複雑」だったものが「複雑」に"軽減"された程度に過ぎず、柔軟性に欠ける。

 さらに、第2次補正予算案で「雇用されている人が国に直接申請して賃金の8割程度の給付を受けられる制度の新設」(14日、安倍首相)も加わるため、休業や解雇、倒産をも視野にギリギリの経営判断を迫られている事業者は戸惑いを隠せない。

 加藤勝信厚労相は、新設する休業者への直接給付金について15日、「使用者の責に帰すべき事由で労働者を休業させた場合には、休業手当の支払い義務が生じる」と指摘。事業者が休業手当を支払わずに、安易に新設の給付金に飛びつかないよう先手を打ったが、運用方法や条件などの具体化はこれから。たび重なる雇調金の拡充・簡素化の最終形も、新たな給付金の創設も、最初の「緊急事態宣言」の発令時に明言していれば、100年に1度の危機において事業者と従業員に再起への強いメッセージと精神的支柱になり得たに違いない。政府は第2次補正予算案を27日にも閣議決定し、6月17日までの今国会で成立させたい考えだ。

家賃支援、資本支援、地方創生臨時交付金など検討、編成急ぐ政府

 長期戦で感染の再拡大を抑えながら、経済を回復させていく手立てとして...


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