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2022年5月23日

主要人材ビジネス企業の2021年度決算

コロナ回復鮮明、人材高度化が課題

 人材ビジネスの主要企業の2021年度決算がほぼ出そろった。20年度は新型コロナの直撃を受け、企業活動全般が制限されたことから、人材ビジネス業界も減収減益に陥る企業が続出したが、21年度はメーカーを中心にした業績回復の波が業界にも広がり、「コロナ前」にこぎつける企業が続出した。22年度はマッチング機能だけでなく、「人材の高度化」に向けた競争が本格化しそうな情勢だ。(報道局)

sc220523.png 業界最大手のリクルートホールディングス(HD)は売上高が26.5%増、営業利益が約2.3倍となり、利益が落ち込んだ1年前から一転して大幅増益となった。堅調な人材派遣に加えて、求人検索サイト「インディード」が米国の景気回復で広告料が急増し、「インディード」を含むHRテクノロジー部門の売上高は2倍、利益は4倍余に急増したのが最大要因。22年度も事業のけん引役になるとみられるが、米国のインフレが景気に与える影響が懸念材料となる。
 
 パーソルグループも売上高が11.6%増、営業利益が87.2%増で、前年の減収減益から二ケタの増収増益となり、売上高は初めて1兆円の大台を達成した。国内の人材派遣では企業のDX戦略が本格化したことから、ITエンジニアなどの受注数が大きく伸びた。人材紹介でもITエンジニアを中心に、企業の採用意欲が回復した。

 ヒューマンHDも就業スタッフは回復傾向で売上高は過去最高となったものの、コロナによる内外の移動規制で社会人教育、外国人教育の稼働率が下がり、営業利益は下がった。理学系派遣のWDBHDは主要顧客の医薬、化学、食品など製造業の研究所や大学研究室などの需要回復により堅調な増収増益を続け、特定分野に特化した派遣の強みを発揮している。

 日本人材派遣協会が四半期ごとに公表している派遣社員の実稼働者総数調査(517事業所)によると、コロナ前は稼働者が約36万人台で推移していたが、コロナ禍で20年7~9月期に約34.2万人の底を付けた。しかし、その後は順調に増え続け、21年10~12月期は約37.3万人とコロナ前を上回る水準まで伸びている。派遣各社の業績回復は、コロナで生じた派遣需要の減少が短期間で終わったことを示している。

 22年度の見通しについては、経済環境の急激な悪化が起きないという前提で、「欧米の労働市場の需給乖離は次第に縮小し、日本では採用需要増が継続する」(リクルート)、「派遣稼働者は引き続き増加、人材紹介は市場拡大を想定」(パーソル)と予想しており、2年連続の増収増益を見込んでいる。

 コロナ禍が収束したとは言えないまでも、これまで抑制されてきた社会・経済活動の本格化が徐々に進むとみられることがプラス要因。一方で、エネルギー価格を中心にした物価上昇も本格化するマイナス要因も予想され、両者が景気にどんな影響をもたらすか、先行き不透明な情勢が続きそうだ。

メーカー復調受け、製造請負系も大きく回復

 事務系だけでなく、製造派遣・請負系でも...


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