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2022年11月28日

約87万人がハラスメント離職

7割は退職理由告げず、パーソル総研推計

 昨年のハラスメント離職者は約87万人で、そのうち7割近い57万人が「暗数化」している――。パーソル総研がこのほど公表した「職場のハラスメントに関する調査」によって、こんな推計結果が出た。この数字が多いか少ないか、議論は分かれそうだが、企業にとっても働く人々にとってもマイナスであることは間違いない。解決策はあるのか。(報道局)

 同調査は8~9月に実施、全国の20~69歳の男女2万8135人(公務員などを除く)から得た回答を集計し、厚生労働省の雇用動向調査で明らかになった年間総離職者数約717万3000人をベースに簡易推計したものだ。

sc221128.png それによると、2021年の1年間に、各種ハラスメントを理由にした離職者数は約86.5万人で、離職者全体の12%を占める。そのうち66%にあたる57.3万人は退職理由を会社に伝えていない(暗数化)。業種別では「宿泊、飲食サービス」が17.9万人で最も多く、「医療・福祉」の14.4万人、「卸売・小売」の12.6万人などが続く=グラフ。年代では20代以下が37.5万人で4割以上占め、最も多かった。

 ハラスメントを直接受けた経験のある人は35%あり、具体的には「仕事ぶりを批判されたり、言葉で攻撃される」(65%)、「乱暴な言葉づかいで命令・叱責される」(61%)、「小さな失敗・ミスに対して、必要以上に厳しく罰せられる」(59%)などが上位に並ぶ(複数回答)。

 これに対して、会社の対応については、「対応あり」はわずか18%で、「認知していたが、対応なし」が37%、「認知しておらず、対応もなし」が45%を占めており、企業側の対応の鈍さが浮かび上がっている。会社や職場にはっきりした理由も言わないまま退職する社員が7割近くいるという事実は、「今の会社に何を言ってもムダ」「転職先を探す方が効率的」といった意識が、若手を中心に強いことがうかがわれる。

 今年4月には、パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)がそれまでの大企業から中小企業にも適用されるなど、政府も法制面の規制を強めている。具体的な「パワハラ指針」では「身体的な攻撃」など6パターンを示しているものの、「精神的な攻撃」(脅迫、侮辱、暴言など)や「個の侵害」(私的部分への過度な立ち入り)といった領域になると、現実の職場では線引きのむずかしいケースも多く、実効性に対する疑問も出ていた。今回のパーソル総研の調査も、それを裏付けるに足りる結果となったと言える。厚労省の個別労働紛争解決制度の施行状況によると、21年度の相談件数35万2914件のうち、「いじめ・嫌がらせ」は24%の8万6034件を占めてトップ。しかも、過去13年間でほぼ一貫して増え続け、10年連続のトップを占めている。

世代間ギャップ、閉鎖型職場などの複数要因

 なぜ、ハラスメントは増え続けるのか。様々な調査や分析が出回っているが、主要な原因として日本の労働慣行がハラスメントを生む土壌となっており、中でも世代要因と職場要因が大きいようだ。

 世代要因は、バブル崩壊までの経済成長期を過ごした中高年世代と、低成長期しか知らないZ世代などの若手とのギャップ。日本経済の成長期は男性を中心とした正社員中心主義(メンバーシップ型)で経営してきた企業が圧倒的に多く、会社と"心中"する長時間労働は当たり前で、社員のスキルは先輩が仕事を通じて後輩に教えるOJTが普通だった。

 こうした体験が染みついている社員が管理職になった場合、...

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