ニュース記事一覧へ

2013年6月10日

社会インフラとしての人材サービス産業を期す  JHR初の試みに全国の経営者層集う

n130610_01.jpg 人材サービス産業協議会(JHR、中村恒一理事長)主催の「全国人材サービス産業経営者会議2013」が10日、東京都内で開かれた=写真右。「時代(さき)をよみ、勝ち残る企業を目指す!」をテーマにした同協議会による初の大規模な企画で、全国各地から400人を超える人材サービス関連企業の経営者層が会場を埋めた。「業界への信頼度がまだ足りない」というあえて厳しい切り込みを自らの業界に向けたうえで、派遣や請負、紹介、求人広告のそれぞれの分野の最前線で奮闘しているトップ陣がパネラーとなってディスカッションし、一歩先を見据えたキャリア形成支援やマッチングの高度化などに既に取り組んでいる現状や、社会インフラとして一層の信頼を得ていくための課題を共有した。

 同会議の狙いは、社会が求める企業、それに伴い企業が求める人材が大きな変化を迎える局面にある今、「使われる人材サービス会社」と「使われない人材サービス会社」を分けるものは何か――を正面からとらえて本音ベースで討議。明日に向けて各企業に次なる一歩のカギを見つけてもらう初の試み。

n130610_02.jpg はじめに、元厚生労働事務次官で法政大学大学院客員教授の戸苅利和氏が「政策・景気に振り回されない企業成長のあり方を考える~民間に期待する労働の流動化サービスとは~」と題して問題提起した=写真左。戸苅氏は政策立案にあたった経験などを織り交ぜながら、労働市場の変化と人材サービス産業の役割などについて、データや年次推移を示して解説し、「グローバルな流れからも企業が正社員の雇用を拡大することは困難な中で、派遣や請負で働く形態がなかったら、どうなっていただろう」と人材サービスの役割を評価。一方で、「世間から派遣事業が批判されると、それに対して十分に反論、正論を返せないのは、コンプライアンスが欠如した運営をしている事業者が少なからずいるからだ」などと、多面的な角度から鋭く指摘した。

n130610_03.jpg 続いて、東京大学大学院情報学環教授の佐藤博樹氏を進行役に、「このままでいいのか!?人材サービス産業~2020年に残る会社は、今何をしているのか~」と題してディスカッションを展開=写真右。パネリストの戸苅氏、東京労働局需給調整事業部長の中村正子氏、全国求人情報協会理事長の丹澤直紀氏、日本人材紹介事業協会副会長の水谷智之氏、日本人材派遣協会副会長の高橋広敏氏、日本生産技能労務協会長の清水竜一氏が、それぞれの分野で既に進めていたり、計画を詰めたりしている(1)キャリア形成支援、(2)ミドル層のキャリアチェンジ、(3)異なる産業・職業へのキャリアチェンジ、(4)マッチングの高度化、(5)人材サービス産業の高度化・人材育成――の具体例を示して紹介し、課題も挙げた。

 ディスカッションの中では、高橋副会長が「派遣社員の教育訓練に投資して他の人材会社に移られたら育て損をしたという気持ちは持たない方がいい、との指摘もあったが、少なくとも派遣協会各社の現場では、そうした感情論は越えつつあると思う」と最近の状況に踏み込み、「各社ごとの競争はすれども、希望に応じて派遣社員に切れ目なく就業してもらうか、限定正社員や正社員の道をバックアップするかに移っている」と強調。次世代に生き残る人材サービス会社の一端を力説した。

 このほか、各協会や同協議会として動いているコンプライアンス向上と業界底上げの活動が報告され、その中では厚生労働省に本年度、基準づくりとして予算が付いた優良派遣事業者認定制度が14年度の開始を目指して進められていることも触れられた。

 同協議会では、戸苅氏の問題提起やディスカッションの内容のほか、参加企業名(希望企業のみ)をまとめた抄録を作成する。


【関連記事】
人材サービス産業協議会が設立式
共有する付加価値に磨き、4団体が横断的連携

 

PAGETOP