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2018年1月 9日

【書評&時事コラム】「明治150年」を生かすには

 今年は「明治150年」ということで、政府、自治体、民間などを挙げた記念イベントが目白押しのようだ。歴史辞典をたぐると、確かに1868年、鳥羽伏見の戦い、「五箇条の御誓文」の発布、江戸城無血開城、慶応から明治に、江戸から東京にそれぞれ改称という、歴史事件が集中した年だった。

 私が学生時代の1968年が「明治100年」にあたり、10月に政府による記念式典が行われた記憶はある。だが、式典とほぼ同じ時期に、ベトナム反戦を掲げる市民運動の「新宿騒乱事件」が起こり、世情は騒然。マスコミもそちらの報道に傾いたため、式典はほとんど注目されなかった。

c180109.jpg その意味で、今回は明治という「近代国家」のスタートを振り返り、先人たちの足跡をじっくりたどる機会になってほしい。しかし、どうも現代の日本人は「明治は明るく、昭和は暗い」という漠としたイメージを持っているように思えてならない。なぜかと考えたら、どうも司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」をはじめとする幕末維新、明治時代を描いた一連の作品に流れる“司馬史観”が浸透したためではないか、と推測される。

 あれはあれで非常に面白く、私も夢中になって読んだ。同時に、歴史には必ず表と裏があるという、ごく当たり前の事実も忘れるべきではあるまい。歴史的事実を含め、司馬史観から漏れたものもたくさんある。今年、私はそれらを丹念に拾っていこうと思う。(俊)
 

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