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2011年5月 7日

【この一冊】『大いなる不安定―金融危機は偶然ではない、必然である』

世界で最も注目される経済学者による金融危機の経済学

oinaru.png『大いなる不安定―金融危機は偶然ではない、必然である 
著者・ヌリエル・ルービニ+スティーブン・ミーム(訳者:山岡洋一・北川和子)
ダイヤモンド社 、定価2000円+税

 
 

 グローバル金融危機の到来をいち早く予想し、世界的に注目された経済学者、ヌリエル・ルービニと経済・文化史の専門家、スティーブン・ミームとの共著の待望の邦訳書である。

 ヌリエル・ルービニはアメリカ経済が絶好調だった2006年9月の時点で、バブル崩壊と金融危機の到来を予想し、その後も彼のブログで危機の展開を正確に予想し、世界的に「一躍その名をあげた」。本書では、この間のグローバル金融危機を包括的に論じており、今回の金融危機に関する最良の解説書だ。

 著者たちは本書の中で「今回の金融危機によって、これからの時代は【大いなる安定】よりも【大いなる不安定】と呼ばれるべきものになることが明らかになった」として、「金融危機の頻度や厳しさが増せば、社会や政治は不安定になり、最終的にはグローバル化に対する反動―保護貿易政策、金融保護主義、資本取引規制、自由市場推進政策に対する幅広い拒絶など―が生まれるだろう」と警告。

 これを防ぐためには逆説的だが、政府の役割の拡大が必要として、金融システムや通貨システムの改革、広範囲の社会的安全網の構築、金融政策や規制の強化、不平等是正のための税制導入などを提言している。

 確かに、本書はさまざまな論点を包括的に扱い、これまでグローバリズムを推進してきた「新自由主義」の理念と政策の一部修正を迫るものではあるが、新しい理念と政策を提示できているわけではない。

 従って、「危機後の世界」への指針を期待する人にとっては、やや期待はずれの印象が残るかもしれない。特に「大震災」からの復興を新しい社会的理念のもとで行わなければならない日本人にとっては、その感は免れない。(酒)

 

 


 

 

 

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