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2012年3月10日

【この1冊】『金融危機後の世界』

「世界のすべての指導者が読むべき」書

c120310.jpg著者・ジャック・アタリ、訳者・林 昌宏
作品社、定価2200円+税

 

 著者は前著『21世紀の歴史』(08年8月訳書発刊)で「サブプライム破綻」「世界金融危機」を予見し、一躍世界的に有名となったアルジェリア系フランス人で、サルコジ大統領が「フランス経済成長解放委員会」の委員長に任命するなど、現実の政治にも大きな影響力を持つ。

 日本でもNHKの特別番組「ジャック・アタリ・緊急インタビュー」が2夜連続で放映されるなど、大きな話題を呼んだ。
 
 本書は前著の続編だが、サブプライム・ローンの破綻や世界恐慌の予測に加え、未来の歴史について、より踏み込んだ予測が提示されている。

 2035年ころまでにアメリカ帝国が終焉し、「超帝国」と「超紛争」が世界に壊滅的な被害を与えるが、60年ころには「超民主主義」が登場し、調和を重視した新たな経済が世界に秩序を与えることになる、と予測している。

 ただし、「新たな経済」や「超民主主義」の具体的な姿は必ずしも明確ではなく、過去の分析はともかく、「未来予測」は説得力を欠くと言わざるを得ない。

 ただ、未来学者のアルビン・トフラーが本書を「ヨーロッパ最高の知的成果の一つ」と絶賛するだけあって、さまざまな知的刺激を与えてくれる書であることは間違いなく、「世界のすべての指導者が読むべき本」であることは間違いなかろう。   (酒)

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