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2012年7月21日

【この1冊】『無名の女たち~私の心に響いた24人』

「有名人妻」を持つ男の女性交遊記

c120721.jpg著者・向井万起男
講談社、定価1300円+税

 

 著者名を見てピンとくる人は多いか少ないか。そんなことが話題になるのは、やはり著者が「日本人初の女性宇宙飛行士、向井千秋さんの夫」という“肩書き”のためであろう。有名人女性を妻に持つ夫といえば、世間はつい「男のプライド」に対する本音を知りたがるが、本書に読めば、「こういう夫だから持っているんだろうな」と納得させられる。

 著者の正式な肩書きは慶大医学部准教授で病理診断部部長だから、むずかしい病理研究に携わり、難解な論文をものしているイメージがあるが、本書はそんな本業の話はスッ飛ばして、仕事などで関わった奥さん以外(無名ではないから当然だが)の女性24人の交流記とでもいったエッセイ集。

 職場の部下、コピーライター、雑誌の編集者、先輩の娘など多種多様だが、これだけセクハラまがいのやり取りをしても嫌われないのは、著者の人徳だからか、それとも「有名人の夫」だからか。「男女の友情は成り立つ」という信念の下、出会う女性とすぐ意気投合する「ステキなおじさま」ぶりが伝わってくる。文章もうまい。やっぱり慶応のお医者さんなんだねえ、アタマいい。

 そんなエッセイ集だから、今回は「有名人の夫」を受け入れるか拒否するかといった葛藤についてはほとんど触れておらず、ひたすら女友達の観察記に徹する。「有名人の夫」でなくても、大いに参考にはなる。

 しかし、このタイトルこそ、「有名人妻」を意識した強烈な男のプライドが残っている証か。考え過ぎかな。

 読後に思ったこと。女房が有名人でなくて良かった。   (のり)

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