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2012年12月29日

【この1冊】『前田敦子はキリストを超えた』

「宗教」になってしまったAKB48

c121229.jpeg著者・濱野智史
ちくま新書、定価740円+税

 
 

 良い悪いは別にして、新刊書の中には題名だけで手に取ってしまうものがある。本書もその一つで、な、なにコレ?!数ある「AKB本」の中でも、ここまで来た感のあるタイトルである。しかも、著者が新進気鋭の社会学者、評論家とあって、ヨタ本扱いするのもどうかと思い、とにかく目を通してみた。

 著者はAKB48を現代の宗教に見立て、8月にセンターを卒業したあっちゃん(前田敦子)の立場をキリストになぞらえる。なぜなら、「不動のエース」でありながら、それ以上のアンチ(反前田ファン)の酷評にさらされてなお、「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください」という「利他性」にあふれる名言を吐いたからだ。

 AKBの選抜総選挙は、あっちゃんにとってキリストが処刑された「ゴルゴダの丘」であり、アンチの「原罪」をすべて引き受けてなお、このセリフ。そう言われれば、そう思えなくもないな。

 著者によれば、AKBが絶大な人気を得た要因に「近接性」と「偶然性」がある。「会いに行けるアイドル」にやっと会えて、偶然に目が合う。そこで、多くのヲタ(ファン)が「信者」になるという。著者自身、1年をかけてAKB劇場、総選挙、握手会に通い、“入信”したという。そして、ポストあっちゃんの推しメンは……。

 本書の文章は必ずしも易しくない。吉本隆明やユルゲン・ハーバーマスらをいきなり引用して、AKBの「関係の絶対性」などを解説されても、著者の頭の中ではつながっているようだが、多くの読者には??といったところか。その点、賛否のある「AKB商法」について「投票券は免罪符」「(有害な)サリンの代わりに(無害な)投票券や握手券をばらまく」とする分析はわかりやすい。

 本書を現代宗教論の金字塔とみるか、稀代のカン違い書とみるかは読者にお任せします。あっちゃんの卒業で、AKB人気はピークを過ぎたとも言われるが、副題の「ハマれ。さらば救われる!」は至言かも。遅まきながら評者もハマってみたいが、信者になってしまいそうで怖い。 (のり)

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