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2013年10月12日

【この1冊】『キャリア教育のウソ』

「就活」の前に教えることがある!

c131012.jpg著者・児美川 孝一郎
筑摩書房、定価780円+税

 

 新卒から正社員への就職を果たしても、その後の諸事情で退社や転職に至るケースは今や普通だ。企業・事業の存続自体が予測不能な時代にあって、「正社員」を絶対的な人生目標に掲げ実行計画に落とし込んでいくキャリア教育のやり方は破綻するのではないかと著者は疑う。

 その懐疑は「計画的偶発性理論」に行き着き、いかなる状況(フリーや非正社員)でも軸となる仕事観を持ち(ときに修正し)、また常にチャンスを得ていこうとする能力こそがキャリアの鍵になるとの知見を導いている。すなわち、就職後も自己理解と職業理解を反復学習できる力を養うのがキャリア教育の役割だと示唆。次元を変えて学校教育のあり方の面から、雇用・納税・公民権といった社会の基礎的な仕組みへの深い理解促進が欠かせないと本質論を述べる。

 働いてもいない段階から将来像を絞り込む無理とともに、「やりたいこと」「やれること」に比べて「やるべきこと」への動機づけが欠落している現状を問題視するなど、迷走するキャリア教育に多方面から警鐘を鳴らしている。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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