「老年科医」による「老年症候群」の包括的解説
著者・大蔵 暢
朝日新聞出版、定価1300円+税
著者は日米の高齢者医療を知る、いわば「高齢者医療専門医」。
日本では医療が臓器別に発展してきたため、高齢者が悪くなった臓器ごとに専門医を回る状況になっているが、加齢による体の老化や精神的ストレスが複雑に絡み合って出現する高齢者特有の病態である「老年症候群」は包括的、総合的に診断すべきだとして、自ら「高齢者療専門医」を実践している稀有な存在である。
「老年症候群」を構成する認知症、せん妄、老年期ウツ、転倒、慢性めまい症、尿失禁・頻尿などを個別に説明しながらも、終末医療をも含む高齢者医療を包括的に説いている。
小児科があるように「老人科」ができる時、本書は最も重要な教科書となるであろう。その意味で、老人医療にかかわるすべての医療関係者と、老年期の人や老年期を迎えるすべての人たちにとっての必読書であろう。 (酒)