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2017年2月14日

【書評&時事コラム】『ポピュリズムとは何か~民主主義の敵か、改革の希望か』

ポピュリズムの本質をえぐり出す

c170214.jpg著者・水島 治郎
中公新書、定価820円+税

 

 トランプ氏の米大統領就任が決まってから、英語の「ポピュリズム」という政治用語がメディアに頻繁に登場するようになった。一般に「大衆迎合主義」「人気取り政治」という、どちらかと言えば否定的な意味で使われるが、実はポピュリズムの根は深い。本書はポピュリズムについての歴史的背景をたどりながら、それがなぜ勢力を伸ばしてきたのか、詳細に分析している。

 「第1章 ポピュリズムとは何か」に始まり、南北アメリカ、欧州大陸、英国と各国のポピュリズム生成、発展、衰退の歴史を7章に分けて概観。現代に直接つながるフランス、オランダ、ベルギー、スイスなど、欧州のポピュリズム政党について解説している。米国については執筆が大統領選直後のためか、詳しい解説はない。

 当然、各国ごとに「お国の事情」を抱えてはいるが、共通するのは社会の格差拡大を既成政党がストップできず、地盤沈下を続けてきたこと。その間隙を縫ってポピュリズム政党が勢力を伸ばしてきたことだ。特に、英国の「置き去りにされた人々」と米国の「ラストベルト(錆びついた地域)」の共通点は著しく、それがEU離脱、トランプ氏勝利という“想定外”の結果を生んだという。日本とは比較にならない格差拡大の産物だ。

 また、これらの層に加えて中間派、穏健派も味方に付ける格好の材料が「反イスラム」「反移民」の排外主義。これも、移民をほとんど受け入れていない日本の想像をはるかに超える社会問題として、ポピュリズムの拡大に寄与していることがわかる。デモクラシー(民主主義)とポピュリズムは光と影、コインの表裏。単なる「大衆迎合主義」として皮肉るだけでは、ポピュリズムの本質を見損なうであろう。(俊)

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