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2019年3月14日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」11・退職者の年休時季指定義務

Q 2019年4月1日に年休が10日付与される派遣社員が、4月末に退職する予定です。このような場合でも時季指定義務により5日取得させなければならないのでしょうか。

nakamiya03.png 途中で退職する場合も5日取得させる必要があります。
 2018年9月7日基発0907第1号に以下の通り示されています。
 「基準日(継続勤務した期間を同条第2項に規定する6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下同じ。)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものであること。」

 年休時季指定の基準日にあわせて退職することはまれであることから、ほとんどの場合、最後に1年未満の期間が生じることになります。1年未満の期間に対しても5日取得させなければならないことから、4月1日初回年休付与10日、4月30日退職の場合でも5日取得させる必要があることになります。多くの場合、残っている年休をすべて取得してから退職することが多いため問題はないと思いますが以下の場合は注意が必要です。

1. 年休の買取
 退職により消滅してしまう年休を買い取ることは禁止されていませんが、時季指定義務は、現実に年休を取得することを求めているため、買い取りは時季指定義務を履行したことにはなりません。年休買い取りの際は5日以上取得しているかどうか確認し、5日以上取得した上で退職としてください。

2. 突発的退職
 突発的退職の場合、退職届の提出日が退職日まで5労働日ない場合も想定され、5日取得させることが不可能な場合が想定されます。また、いわゆる「フェードアウト」のように欠勤が続きしばらくしてから退職したため5日取得させることができないことや、連絡が取れなくなり事後、最終出勤日を退職日としたために5日取得させることができないこともあると思います。このような場合まで法違反として取り扱うことはないと思いますが、特別な事情により取得させることができなかった場合は、年休管理簿等に退職に至る経緯を記録し、労基署から説明を求められた場合に備えておく必要があります。

 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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