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2019年8月15日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」33・一般賃金の能力・経験調整指数

Q 労使協定方式を採用した場合、派遣社員の賃金は「3年で3割アップ」なのでしょうか。

 3年で3割昇給する賃金制度を構築することは差し支えありませんが、義務ではありません。一般賃金は、賃金基本統計調査の勤続年数別の集計から算出した能力・経験調整指数を乗じた金額を示していますが、勤続年数に比例して金額をあてはめることは求めていません。

令和2年度の能力・経験調整指数

0年 1年 2年 3年 5年 10年 20年
100 116 126.9 131.9 138.8 163.5 204


nakamiya03.png 労使協定方式では、基本給のように職務と密接に関連する賃金について、派遣社員の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に昇給するものでなければならないとされていますが、どの項目を重視して、どのように評価するかは労使の話し合いで決めるものとされています。

 勤続年数を経験向上の要素としてそれだけを理由に昇給することも考えられますが、一般賃金に関する通達(職発0708第2号)では、「何年目」について次のように示しています。「協定対象派遣労働者の賃金の決定方法に応じて、協定対象派遣労働者の能力及び経験を踏まえつつ、一般の労働者の勤続何年目相当に該当するかを考慮して適切なものを選択すること。例えば、協定対象派遣労働者の賃金が職務給である場合には、派遣労働者の業務の内容、難易度等が一般の労働者の勤続何年目に相当するか、という観点から選択することが考えられること」

 通達の例は、職務内容を重視し、どのような業務に従事しているかを基準に賃金を決定する職務給であれば、その業務の内容に応じて「何年目」であるかを検討することを求めており、勤続年数だけを基準とするものではないことが読み取れます。

 通常の労働者に対して、会社ごとに様々な賃金・評価制度があるように労使協定方式では、派遣会社ごとに派遣社員のための賃金、評価制度を整備することが求められています。 

 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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