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2019年10月10日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」41・通勤手当、退職手当を時給に含める場合

Q 通勤手当、退職手当を時給に含める取り扱いをする場合、一般賃金とどのように比較すればよいのでしょうか。

 通勤手当が時給に含まれているとする場合、一般賃金に一般通勤手当72円(2020年度)を加算した額と同等以上の時給としなければなりません。また、退職手当を前払い方式で6%上乗せする場合も同様です。 

通勤手当を含む場合 一般賃金+一般通勤手当(72円)≦時給
退職手当を含む場合 一般賃金+一般賃金の6%≦時給
両方を含む場合   一般賃金+一般通勤手当(72円)+一般賃金の6%≦時給

例:比較対象となる一般賃金1400円の場合
  退職手当前払額 1400円×6%=84円
  一般賃金1400円+一般交通費72円+退職手当前払84円=1556円
  比較対象となる賃金=1556円


nakamiya03.png 通勤手当と退職金が時給に含まれているとするのであれば、1556円以上の時給でなければならないことになります。仮に現在の時給が1500円であれば、56円不足するため、2020年4月1日から時給を引き上げる必要があります。また、現在の時給が1600円の場合、1556円以上となっているため時給の改定は必要ありませんが、退職手当の取り扱いについて派遣社員に十分説明する必要があると思います。

 通勤手当については、従前より時給に含まれると説明していることが多かったので、今回の改正対応においても含まれる額が72円と明確になるだけのことですが、退職金は、これまで「無し」と説明してきたと思われます。そのため、今回新たに退職手当を含めるのであれば、時給1600円の派遣社員は、前払い相当額84円時給が引き下げられたような印象を持ってしまう恐れがあります。

 法改正に向けて、派遣社員の時給引き上げに関する期待が高まっていることから、退職手当を時給に含めて取り扱う場合に相応の時給改定がなされないのであれば、制度を理解していただけるよう丁寧な説明が必要となります。

 

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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