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2020年4月14日

【ブック&コラム】『"家族の幸せ"の経済学』

データに基づき、通説・俗説に挑む

c200414.png著者・山口 慎太郎
光文社新書、定価820円+税


 「帝王切開で産むと落ち着きのない子に育つ」「赤ちゃんには母乳が一番」「3歳までは母親が子育てすべき」――。出産・育児をめぐって、今もこうした通説が結構まかり通っている。しかし、これらはどれも誤りだという。

 本書は、こうした家族にまつわる通説・俗説が本当かどうか、エビデンス(科学的根拠)に基づいて分析したもの。結婚、赤ちゃん、育児休業制度、イクメン、保育園、離婚の6章構成。どれも身近な生活テーマで、政府による政策なども活発だ。

 その結果、「似た者同士の結婚」が多い理由、帝王切開は子供に影響を与えない、母乳育児のメリットはそれほどでもない、北欧などもつい最近までパパの育休は取りにくかった、育休は1年で3年は無意味、保育園は親の幸福度も上げるなど、意外な分析結果も多くて興味をそそられる。

 ただ、分析に使っている資料は、主に欧米の調査データで、日本のデータは少ない。だから、分析結果をそのまま日本に当てはめることには慎重にならなければならない。家庭にかかわる調査はプライバシー色が濃く、日本では協力が得られにくいという事情のため、という。少子高齢化の克服や女性の社会進出などが掛け声の割に進まないのは、政策立案に必要なエビデンスが欠けているのも一因と言えそうだ。

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