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2020年6月18日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」25・新型コロナウイルスの雇用調整助成金の特例措置⑦

Q 雇用調整助成金の上限額が1万5000円に引き上げられたと聞きましたが、すでに助成金を申請している場合はどうなるのでしょうか。

koiwa.png 第二次補正予算が成立したことにより、雇用調整助成金の1人1日あたりの上限額が8330円から1万5000円に引き上げられました。第23回でも紹介したように上限の引き上げが遡及するかどうかが注目されていましたが、ニュースなどを聞いて安心した人も多いと思います。6月12日付の特例措置により4月1日に遡って適用されるため、すでに支給決定されている事業主に対しても追加の助成額が支給されることになります。追加支給は、具体的には以下の3パターンがあります。

①支給申請中でまだ支給決定されていない事業主
 追加支給の手続きは不要であり、事業主は何もしなくても国の方で自動的に差額(追加支給分)を計算して支給されます。この点については発表されるまでは事業主が追加分の申請をしなければならないのではという見方もありましたが、そうなると計算や手続きなどがかなり複雑になったと思われますので、今回の暫定措置は事業主目線に立った内容だと思います。ただし、実務的には相当の混雑が予想されるため、差額は7月以降順次支給されるとされています。

②すでに支給決定された事業主
 ①と同様に事業主は追加支給の手続きは不要であり、自動的に差額(追加支給分)が支給されることになります。

③支給申請中の事業主で、過去の休業手当を見直し、従業員に対して追加で休業手当の増額分を支給した事業主
 この場合は、追加支給の手続きが必要となります。具体的には、一度締結した休業協定書を見直して休業手当の率を変更することで、結果的に支給額が増額されるケースです。厚生労働大臣が記者会見などでこれを認める旨の発言をしていましたが、そうした方針に従って遡及が認められることになりました。

 ③の場合は、9月30日までに再申請書(様式)とともに支給要件確認申立書、支給決定通知書の写し、増額した休業手当・賃金の額がわかる書類、休業させた日や時間がわかる書類(対象労働者を増やした場合)などを提出しなければなりません。申請書は様式が新しくなりましたが、通常の申請と再申請とでは様式が異なりますので注意しましょう。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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