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2020年6月25日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」26・新型コロナウイルスの雇用調整助成金の特例措置⑧

Q 特例の雇用調整助成金を申請したいと考えているのですが、助成金は労働者の賃金(休業手当)に対して支給されるわけではないと聞きました。どのような仕組みで支給されるのでしょうか。

koiwa.png 新型コロナウイルス感染症の特例措置の雇用調整助成金は、中小企業の場合、休業手当の相当額の4/5(解雇等を行わない場合は10/10)が助成されます。ただし、この助成額は会社が実際に支払った休業手当の4/5(10/10)ではありません。

 労働保険料確定申告書に基づいて算定するのが原則ですが、手続きの簡略化により源泉所得税の納付書によって算定することもできるようになりました。小規模事業主の特例では、「実際に支払った休業手当の額」を「休業実績一覧表」に入力して計算することが認められますので、人数規模によって対応方法が異なることに注意しましょう。原則的な方法では、以下のような計算式に基づいて計算します。

①「平均賃金」(1日あたり)を計算する
雇用保険被保険者の賃金合計 × 雇用保険被保険者数 × 年間所定労働日 = 平均賃金(1日あたり)

②助成金の金額(1日あたり)を計算する
平均賃金(1日あたり) × 休業手当の率(60~100%) × 助成率 = 助成額

 「平均賃金」は、原則として過去3か月の賃金を総日数で除した金額(労基法12条)ですが、雇用調整助成金では別の意味で使っています。具体的には、直近の労働保険料申告書から雇用保険に加入していた全労働者の日給を求めたものを「平均賃金」といい、この金額に基づいて助成額が計算されます。

 したがって、AさんにはAさんに支給された休業手当の〇%が支給されて、BさんにはBさんに支給された休業手当の〇%が支給されるわけではなく、AさんもBさんも上記のように計算した事業所の「平均賃金」に基づいて助成金の日額を求めることになります。

 第2次補正予算成立により日額上限は8330円から1万5000円に引き上げられましたが、以前は1日あたりの賃金が低いパートタイマーなどで休業手当の支給率が高いケースでは、休業手当として支給する金額よりも助成額の方が多くなる逆転現象も少なくありませんでした。

 特例措置により解雇等を行わない場合は10/10の支給率となったため、問題になることは少なくなりましたが、必ず実際に支給された休業手当分が助成されると勘違いしているケースもありますので十分に注意したいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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